鶴岡東が山形中央に2度追いつかれながらも延長11回10-8で振り切り、2年連続5度目の夏の甲子園出場を決めた。8-8の11回2死一、三塁から伊賀松飛翔内野手(2年)が決勝重盗を決めた。同校初の1勝を挙げて進出した昨夏の16強超えを狙う。

 必死に本塁へ突っ込んだ。2度追いつかれて迎えた延長11回2死一、三塁。9番萩原誉人内野手(3年)の打席、カウント2-0から重盗を仕掛けた。一塁走者の阿部泰知外野手(3年)が大きめのリードをとって一塁けん制を誘発。相手一塁が挟殺を狙い二塁に投げた瞬間、三塁走者の伊賀松が一気に駆けだした。「サインは出るかなと思っていた。手が先にホームへ入ったので点が入ったと思った」。伊賀松の会心の激走が夏連覇をたぐり寄せた。

 この日2安打3打点の萩原の打席であえてサインを出した佐藤俊監督(44)は胸の内を明かした。「あそこは勝負どころ。あのままだと危ないと思った。引き出しはあるので」。伊賀松も期待に応えた。兵庫・西宮の深津中では東成シニアに所属しながら陸上部も掛け持ちし、100メートル11秒9の快足を誇った。「毎日のようにサインプレーは練習していたので」と胸を張った。

 粘り強さが真骨頂だ。リードされている場面でも、集中力を切らさずプレーするため、夏本番前から「プレッシャーノック」と呼ばれる練習を始めた。外野をつけず内野がノックを受け、エラーをしたらベンチ外の3年生と外野手がグラウンド内100メートル往復を罰走。伊賀松は「何度も先輩を走らせてしまって申し訳なかった。今日は緊張したけど、ビビらずにやれた」と練習の成果を強調した。

 手応えをつかんで、2年連続の夏に向かう。佐藤監督は「劣勢の場面でも顔が暗くならなかった。最後まであきらめなかった」と成長したチームを褒めたたえた。昨夏は1勝を挙げて16強進出。主将の4番佐藤要内野手(3年)は「この仲間で去年の先輩たちを超えるよう成長できた。全員野球で1戦必勝でやっていく」と自信を持って宣言した。【高橋洋平】