名門対決は浜商に軍配! 浜松商が静岡を4-3で下し、6年ぶりの8強進出を決めた。1点リードで、エース大橋建斗(3年)をリリーフした公式戦初登板の増田理人投手(2年)が4回無失点。鈴木祥充監督(53)が、この日まで隠していた技巧派左腕が強力打線を封じた。静岡は、県勢では戦後初の夏の甲子園3年連続出場を目指したが、果たせなかった。

 4-3で迎えた9回裏2死二塁、一打サヨナラのピンチで打席には静岡の主砲・鈴木将平(3年)。歩かせる選択肢もあったが、増田理は逃げなかった。「逃げたら危ない。勝負します!」。外角低めにスライダーを投げ込むと、打球は右翼へ。半田重人(2年)が捕球して勝利が決まった瞬間、ベンチから選手が駆けだし、一塁側の浜松商応援席が歓喜に包まれた。

 文字通りの作戦勝ちだった。鈴木監督は6月25日の抽選会後、優勝までの7戦をシミュレーションした。「順当に(4回戦の)相手が静高なら増田を使うと決めていて、狙い通りです」。1999年(平11)には静岡を率いて春夏連続で甲子園出場。「静高野球」を知り尽くす指揮官の策が見事にはまった。増田は、身長170センチの技巧派で最速130キロ前後の直球、80キロ台のスローカーブに、100キロ台のスライダーを駆使した。6回から公式戦初登板で、面食らいながら強振してくる静岡打線をいきなり3者三振。最後までタイミングを外し続けた増田理は「緊張しましたが、先輩に声をかけてもらい楽になりました。この試合のために全ての準備をしてきました」と胸を張った。

 打撃でも仕掛けた。試合前練習から全員がホームにヘッドスライディング。試合でも平凡な内野ゴロでも一塁へのヘッドスライディングを繰り返した。これが見えない重圧となり、堅守を誇る静岡の4失策を誘った。佐藤湧人主将(3年)は「プレッシャーをかけて、気迫で押せたと思います」と笑顔。それでも「あくまで通過点。静高に勝ったからといって甲子園に出られるわけではない」と、すぐに表情を引き締めた。今日24日の準々決勝では浜松学院と対決。王者静高を倒した名門が、16年ぶり10度目の夏の甲子園出場へ突き進む。【鈴木正章】