顔色ひとつ変えなかった。「茨城の中田翔」こと、明秀学園日立の細川成也投手(3年)は、先制の63号3ランにも、淡々とダイヤモンドを1周した。初回1死一、二塁。カウント1-2と追い込まれながらも、外角高め直球を振り抜き、逆方向の右中間席後方へ飛び込む、推定飛距離140メートル弾を放った。「素直にバットが出せて良かった。これくらい飛ばすことはよくあるので驚かなかった」と冷静に振り返った。

 エースで4番として、昨夏代表の霞ケ浦を相手に力を見せつけた。スタンドには5球団10人のスカウトが熱視線を送った。日本ハム岩舘スカウトは「これだけ振れて、これだけ飛ばせる選手は貴重な存在。ウチの中田翔のようになれる」と話せば、DeNA河原スカウトも「スイングしただけでスタンドが沸いていた。高校生の右打者では今年ナンバーワン」と、いずれも打者として高評価だった。

 エースとしても4安打1失点、11奪三振の好投でチームを引っ張った。時折、「オリャ~」という雄たけびが客席まで届くほど、気迫を前面に押し出した。最後の打者を打ち取ると、右の拳を握りしめて、ようやく笑顔を見せた。「常総学院を倒さないと甲子園に行けないと思って練習してきた」と話した。決勝の相手に不足はない。持ち前のフルスイングと全力投球で、悲願の甲子園切符をつかみ取る。【高木遊】