第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)西東京大会決勝が27日行われ、、八王子学園八王子が春夏通じて初の甲子園出場を決めた。

 「ポケモン軍団」が笑った。泣いた。八王子学園八王子を聖地へ導いたのは、準決勝まで14打数1安打と苦しんだ166センチの1番打者だった。山口駿外野手(3年)が3-3の延長11回、1死二塁から右中間へ決勝の適時三塁打。「決勝まで連れてきてくれた恩返しがしたかった」。同校3度目の決勝で、甲子園切符という“獲物”を捕まえた喜びを爆発させた。

 狙いは「モンスターボール」だった。東海大菅生のエース伊藤壮汰(3年)は、縦、横、斜めの3種類のスライダーで日大三を倒した強敵。山口は「得意な球を打たないと、気持ちよく投げられてしまう」。全員がベルト付近の決め球に的を絞り、3回までに3点をゲット。山口の決勝打もスライダーを打ち砕いた。

 塁に出れば「GO」だ。作戦は「けん制が上手ではないし、変化球も多い。アウトになってもいいから行け」。この日は成功率100%で5盗塁。今大会6試合23盗塁と走りまくった。

 昨秋はブロック予選の初戦で敗退。小粒なチームが、足を磨いて進化した。中学教員時代にバスケットボール部を日本一に導いた安藤徳明監督(54)は言った。「史上初めてブロック予選の初戦で負けたチームだけど、初めて甲子園に行く代にしよう」。冬場は体力づくりを後回しにして、練習の半分以上を走塁に割いた。「知らなかった点の取り方を教わった。毎日が新しい発見だった」(山口)。難関をクリアする楽しさが芽生え、夏に開花した。

 準々決勝で清宮幸太郎内野手(2年)擁する早実を破り、勢いに乗った。試合前日に選手が通う温泉施設でも鉢合わせする宿敵に、昨夏の雪辱を果たして自信をつけた。監督は「過去にもっといいチームはあったが、早実戦から流れが来てると思った」。有名クラブチーム出身者も、プロ注目の選手もいない。等身大の野球で、甲子園でも旋風を巻き起こす。【鹿野雄太】

 ◆56万人八王子市メモ 地名の由来は、牛頭天王と8人の王子をまつる信仰の広がりとされる。人口は約56万人。全国で人口40万人以上の市町村(東京23区をのぞく。計45市)のうち、昨夏に専大松戸(松戸市)が甲子園初出場したことで、春夏甲子園出場校が出ていないのは八王子市と横須賀市(神奈川)だけだった。今夏の西東京大会は八王子学園八王子を含む16校が出場。聖パウロ学園が8強、明大中野八王子が16強入りした。

 ◆八王子学園八王子 1928年(昭3)創立の私立校。12年に現校名に改称。生徒数は1572人(女子813人)。バスケットボール部、吹奏楽部なども盛ん。野球部は72年に創部。部員数は76人。主な卒業生に小川直也氏(柔道)、田中雅美氏(競泳)。所在地は八王子市台町4の35の1。小山貢校長。

◆Vへの足跡◆

3回戦8-1田無

4回戦8-0町田

5回戦10-1明大中野八王子

準々決勝6-4早実

準決勝8-6創価

決勝5-3東海大菅生