「超気合い!MAX」で3季連続の甲子園をつかんだ。第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)の東東京大会は28日に決勝が行われ、関東第一が延長10回逆転サヨナラ勝ちで東亜学園を振り切った。1点を勝ち越された直後の10回裏に連打から同点。最後は今夏初スタメンの森川瑶平内野手(3年)がサヨナラ打を放った。

 身長158センチの森川が、最後に大仕事をやってのけた。同点とした直後の10回1死一、三塁。3球目の外角ストレートを逆らわずに右中間へはじき返した。飛び込んだ右翼手も届かない。サヨナラだ。誰よりも大きな声で盛り上げてきた背番号「14」は左拳を握り、ナインと歓喜の輪をつくった。「体が小さいので、右方向に強い打球を打つ練習ばかりしてきた。自然に涙が出てきた。本当に最高です」。楽天オコエの自主練習パートナーだったチーム一の小兵が、自身初のサヨナラ打で甲子園に導いた。

 昨夏の「オコエ世代」以前から受け継がれる地道なプレーが、今夏3度目のサヨナラ勝ちを呼んだ。1点を勝ち越された10回表、2死三塁の場面で高く弾んだゴロが三遊間へ。三塁手が捕り損ねた打球を、遊撃手の村瀬佑斗主将(3年)が瞬時に後方からカバーして追加点を阻止した。直後の打席で同点打を放った村瀬は「常に予測して練習してきたので『来る』と思った。最後の打席は気持ちだけで思い切り振った」。食事がのどを通らないほどの重圧と戦っていた主将が、崖っぷちのチームを救った。

 スターは不在でも、全員で大きな星をつくった。村瀬は昨秋の東京大会3回戦で自打球が顔面を直撃。救急搬送され、左目付近2カ所と鼻を骨折した。「光も見えなくなった。失明して野球ができなくなるのも覚悟した」。絶望しかけた時、励ましてくれたのが仲間だった。「村瀬をもう1度戦わせるまで負けない」。視力が戻って試合復帰しても約束は途切れることなく、昨夏から続く都公式戦の連勝を「25」に伸ばした。

 今春センバツは初戦で東邦(愛知)に1安打完封負け。雪辱に燃えている。村瀬は「執念はオコエさんたちにも負けない」。森川は「背が伸びるのもあきらめない」と言った。東京の常勝軍団が、聖地でも奇跡を起こす。【鹿野雄太】

 ◆関東第一 1925年(大14)創立の私立校。生徒数は2007人(女子917人)。野球部は27年創部。部員数は88人。甲子園は春6度、夏7度の通算13度目。主なOBに日本ハム武田勝、DeNA山下幸、楽天オコエら。江戸川区松島2の10の11。松橋勝政校長。

◆Vへの足跡◆

3回戦8-3文京

4回戦6-4堀越

5回戦9-2足立西

準々決勝3-2修徳

準決勝3-0城東

決勝4-3東亜学園