福岡大会準決勝2試合が行われ、06年以来10年ぶり3度目の夏の甲子園を目指す福岡工大城東が延長の末、2-1で福岡第一を下し、決勝に進出した。延長10回、2番の中園健斗(たけと)三塁手(3年)が、1死二塁から左中間を破るサヨナラ適時二塁打を放った。決勝は今日30日に北九州市民球場で行われる。

 打球が左中間を抜けると、迷わず両手拳を突き上げた。福岡第一との接戦にケリをつけたのは、今大会2、3、5回戦でスタメン落ちしていた福岡工大城東・中園だった。9回、先発の坂元翔太投手(3年)が同点に追いつかれて迎えた延長10回。無心でバットを振り抜いた。人生初のサヨナラ打だった。

 「一緒に苦しい時期を乗り越えてきた坂元が頑張って投げていたので、自分が決めてやろうと思った」

 1年からレギュラーだったが、今春に調子を落とし、入学したばかりの1年生に一時、レギュラーを奪われかけた。去年から試合で投げていた坂元も同時期に調子を落とし、苦しんでいた。2年生から同じクラスの2人は「お前が投げないと勝てない」「お前が三塁にいると楽に投げられる」と励まし合ってきた。それだけに「こういう形で勝ててうれしい。泣きそうになった」と、泥だらけのユニホームで汗をぬぐった。

 兄が味わった悔しさを晴らしたい思いもあった。3つ上の兄重輝(しげき)さん(21)の後を追って福岡工大城東に進学。兄は背番号3だった3年生の13年夏に準々決勝で門司学園に9回に5-0をひっくり返され、サヨナラ負けで最後の夏を終えた。

 その試合をスタンドで応援していた中園は「練習がきついからやめたほうがいい」という兄の助言を押し切って翌年春、野球部に入部。練習初日前夜、「つらいこともあると思うけど、終わったらいい高校だなと思える。俺は甲子園にいけんかったけど、お前は行ける」とメールで激励された。

 その兄がスタンドで見守っていたなかでのサヨナラ勝利。中園は「次も打って甲子園に行きたい。僕から言うのは恥ずかしいので、兄からの祝福を待ってます」と無邪気に笑った。【福岡吉央】