監督のためにも勝つ。第98回全国高校野球選手権(7日開幕)の甲子園練習が3日、同球場で行われた。7年ぶり22度目出場の東北(宮城)のエース左腕渡辺法聖(3年)は、マウンドに立って16球を投げた。今春の関西遠征で甲子園に立ち寄り、我妻敏監督(34)から夏1勝を託されたことを明かした。チームは30分間、すべて守備練習に充てた。組み合わせ抽選会は今日4日に行われる。

 初めて立った甲子園のマウンドは心地よかった。ほとんどテークバックがない独特のフォームから、渡辺が16球を投げ込んだ。「ストライクが投げられるのか不安だったけど、ほとんどストライクを投げられた」と笑った。マウンドの横では我妻監督が投球を見守り、右足の上げ方などをアドバイスされた。

 今春の関西遠征で、センバツが開催されていた甲子園球場に立ち寄った。ちょうど大会中に設けられた休養日。試合のない日は、センター後方のバックスクリーン上部に人が歩ける通路が開放され、グラウンド全体を見渡すことができる。そこに立った渡辺は「監督さんから『オレを甲子園で勝たせてくれ』と言われました」と、熱く夢を託されたことを明かした。その思いを強く胸に秘め、投げ続けてきた。

 甲子園の土を踏み、ノックをした我妻監督は「やっとここに戻って来られた。やってきたことが報われた」と実感を込めた。渡辺は背番号7の春の中部地区大会で完封勝ちを収めるなど、その後の県大会からエースナンバーを背負った。県大会を準優勝して、東北大会を制した。夏の宮城大会も全6試合に先発して、防御率0・75。春から東北を強くしたのは、紛れもなく背番号1の左腕だった。

 今日4日、対戦相手が決まる。渡辺はセンバツの覇者・智弁学園(奈良)との対決を望むが「野球ができていることに感謝したい」と言った。勝利を手にすれば、高校野球はまだ続く。春に我妻監督とかわした言葉を現実にする日が、近づいて来ている。【久野朗】