第98回全国高校野球選手権(7日開幕、甲子園)の南北北海道代表は3日、そろって兵庫県伊丹市内のグラウンドで約2時間の練習を行った。初出場のクラークは、この日から練習に氷水を投入。ひしゃくで首の後ろにかけて、猛暑をしのぐ作戦だ。名付けて「ひしゃくで秘策」と佐々木啓司監督(60)。今日4日には、組み合わせが決定。甲子園を知り尽くした知将のアイデアで、本番に備える。

 照りつける太陽も、怖くない。最高気温33度を計測したこの日、グラウンドにクラークナインの歓声が響いた。「冷たい」「気持ちいい」。守備練習を終え、汗だくになった選手たちが、次々と45リットルのバケツ前に列をなした。佐々木達也部長(32)らが、バケツから“ひしゃく”ですくったのはキンキンに冷えた氷水。熱を帯びた選手の首の後ろに、容赦なくぶっかけていく。「俺もやってもらおうかな」と佐々木監督も飛び入り参加し「毛穴にしみるな~」と、気持ちよさそうに目を細めた。

 発案者は、もちろん監督だ。「暑さをしのいで、どうやって楽しく野球をやるかが大事なんだ。暑さとまともに戦っても仕方ない。うまく逃がすことを考えないと」。駒大岩見沢時代、夏4度の甲子園を経験している知将が「こっちへ来て、ひらめいた」という“秘策”。この日の朝、宿舎周辺のコンビニで板状の氷を買い占め、宿舎からブロック氷を入手してホクホク顔で練習場にやって来た。

 打撃練習の合間にも、選手たちは入れ代わり立ち代わり、つかの間の水浴びで鋭気を取り戻す。ベンチ前に鎮座したバケツを見て「最初は何に使うのかと思った」という阿部勇斗主将(3年)も「頭がキーンとして気持ち良かった。継続して集中しながら練習ができる。監督は工夫するのが、うまいんです」と絶賛だ。

 ヒグマ流の“秘策”は、これだけでは終わらない。「試合中のも、ちゃんと考えてるよ。ベンチを見てれば、分かる、分かる」と次の一手をにおわせたアイデアマンは「最後は選手の精神力。後は、どれだけ監督が試合を読むかだ」と本番を見据える。甲子園で、どんな奇策が飛び出すか。グラウンドだけでなく、ベンチからも目が離せない。【中島宙恵】