中越(新潟)ナインは8日、京都・久御山町で練習した。オフ明けの練習は実戦を想定した濃い内容だった。1番打者としてチームに勢いをつける役割の斉藤隆弥(3年)のバットも好調をキープ。変則的な打撃フォームだが、速球にはめっぽう強い。富山第一の投手陣は速球派がそろっているだけに、切り込み隊長が最初にガツンと相手をたたく。

 テークバックする斉藤隆のバットのヘッドは、ほぼ真下を向く。反動をつけてボールを鋭くとらえ、強烈にはじく。変則的なフォームでタイミングを取る独自のスタイル。オフ明けの打席でも好調さを披露した。状況設定しての打撃練習だ。1死三塁を想定した場面で、三遊間を抜く強烈な適時打を放った。本塁から15メートル離れた地点で投手が投げて、速球派投手対策を施していた中での強い打球だった。

 「自分が先頭で出塁すれば、勢いづく。チームを乗せたい」と斉藤隆は言う。春の県大会後に少しずつ下がってきたバットのヘッドは、ほぼ真下で固定された。「動きながら、いい感じで打てる」と変則フォームへの自負を明かした。相手の球速に対応して、バットの握りを微調整。富山第一のエース中津原元輝(3年)は最速144キロを誇るだけに、最初に対面する斉藤隆の役割は重要だ。

 1年のころは、きつい練習についていけなかった。「1年の夏休みがつらかった」と、食事もノドを通らず、体重は一気に10キロ減った。現在は67キロ(登録では65キロ)だが、当時は54キロまで落ちた。糸魚川市の実家の両親も心配し、母久美子さん(48)が毎週のように手料理を作って野球部寮の斉藤隆のもとに持ってきた。そんな苦難を経てたくましくなった。猛暑が続く大阪でも食欲は落ちず、体重67キロをキープしていた。

 50メートルは6秒4で新潟大会では盗塁3。「塁に出たら、積極的に次を狙いたい」と言う。新潟大会では打率2割4分ながら、1番打者の出塁は勝利のカギだ。「大阪にきて、斉藤(隆)はいい状態になってきた」と評した本田仁哉監督(39)は続けた。「1番が出塁して後ろがかえす、というのは間違いなく勝利の条件になる」。変則打法の急先鋒(せんぽう)への期待は大きかった。【涌井幹雄】