富山第一がノーヒットノーランの危機から一転、今大会初のサヨナラ勝ちを決めた。9回1死まで無安打だったが、狭間悠希捕手、河原大成内野手(ともに3年)の連続二塁打で中越(新潟)にサヨナラ勝ちした。

 0-0の9回1死まで中越のエース今村の前に無安打。あわや屈辱のノーヒットノーランという負の展開を、中軸のバットが救った。4番狭間が右中間を破る二塁打でチーム初安打を放つと、続く5番河原が左中間へサヨナラ二塁打。わずか2スイングで劇的勝利を飾った。

 なかなかHランプが点灯しない。8回は失策と2四球で2死満塁のチャンスを作った。ただ、佐々木の中堅へ抜けそうな鋭いライナーは今村のグラブの中へ。投直-。大歓声を聞いた狭間は「あれで焦った。球場がノーヒットノーランを期待していると思った」。一塁側ベンチには重苦しい空気に包まれた。

 9回裏の攻撃前、狭間は河原に「変化球を狙う」と誓えば、河原は狭間に「俺はストレート1本に絞っていく」と断言した。言葉通り、狭間は2球目のスライダーを仕留め、河原は直球を振り抜いた。河原は、富山大会の打率が1割4分3厘で、決勝戦は9番に降格。甲子園入り後に何とか調子を上げ、5番に座った。この夏3本目の安打が人生初のサヨナラ打。「今までで一番、最高の瞬間でした。チームに迷惑をかけていたので、とにかくチームに貢献したかった」と笑顔で汗をぬぐった。

 口火を切った狭間は「つらかった。もうこんな試合展開はやりたくないです」と苦笑い。黒田学監督(35)も「こんなはずじゃないという展開だった。甲子園は怖いと常々思っていましたけど、あらためて勉強になりました」。初出場でベスト8の13年夏を見て入学してきた3年生たちが、劇的な勝利で発進した。【宮崎えり子】