10年連続13度目出場の聖光学院(福島)が、初出場のクラーク(北北海道)を5-3と振り切って2年ぶりに初戦を突破した。6回終了時まで1安打に抑えられていたが、1-3で迎えた8回無死満塁に5番小泉徹平内野手(2年)が走者一掃の逆転左中間三塁打を放った。3回戦は17日の第1試合に決まった。

 背負ってきたものが、違う。10年連続出場の意地が、聖光に底力を発揮させた。1-3で迎えた8回。先頭の四球を皮切りに安打、相手失策で満塁まで攻め立て、この日3打数無安打の小泉が打席に向かう。「追い込まれるとシンカー、スライダーがある。初球からガツガツ行こうと。迷いなく打てた」。初球、外角低めの直球を逆方向に振り抜き、前進守備の遊撃手の頭上を越える、走者一掃の左中間三塁打で一気に逆転。初出場の相手に、負ける訳にはいかなかった。

 福島大会では3度の逆転勝ちで、苦しんだ末に10連覇を達成した。この日、先制を許す苦しい展開でも小泉は「想定はしていた。県大会から前半は負けていることが多い。甲子園でも同じ。あのイニングが聖光です」と胸を張った。普段の練習から7回スタートのミニ紅白戦を実施してきた。斎藤智也監督(53)にビハインドを設定され、負けると罰走のベースランニングが科される緊迫感の中で、鍛えられてきた成果が本番で出た。

 「弱いけど強い」のが今年のカラーだ。プロ注目選手がいるわけではない。大黒柱のエース左腕・鈴木拓人(3年)は昨秋、最速140キロを計測するほど絶好調だったが、東北大会初戦で敗れてセンバツを逃した。春の県大会は不調に苦しみ、公立の磐城に準決勝で敗れ7連覇を逃した。夏のコールド勝ちは初戦だけ。それでも斎藤監督は「今年は力はないけどタフさがある。自分たちに力がないということを知っている。だから挑戦者として向かっていける」と分析する。これまでの他を圧倒する強さはないが、泥臭く食らい付くことで「聖光野球」を維持してきた。

 過去12度の出場で最高成績は3度の8強進出だ。小泉は「前半からのみ込まれないように、気持ちを入れてやっていきたい」と前を向いた。斎藤監督は常日頃から「甲子園は行く場所じゃなくて、勝つ場所」と言い続けてきた。10年かけて培ってきた集大成を、あとは聖地で発揮するだけだ。【高橋洋平】