優勝候補の横浜(神奈川)が履正社(大阪)との天王山に敗れた。

 雷雨で2度中断する中、2回途中から救援したドラフト1位候補の藤平尚真投手(3年)が踏ん張ったが、打線は同1位候補の寺島成輝投手(3年)から初回の1点しか奪えず1-5で敗れた。

 やっとたどり着いた最初で最後の甲子園。敗れた藤平は、最後まで笑顔だった。「僕がリリーフして点を取られたのが勝負の分かれ目。1回から9回を寺島と投げ合いたかった。僕がみんなを慰めないといけない」。昨秋の関東大会で初戦負けし、号泣した姿はどこにもなかった。試合後は寺島と握手を交わし「絶対に優勝してくれ」と言い、憧れ続けた聖地の土を集めた。

 履正社の上位打線に左打者が並ぶことから、先発は左腕の石川に託された。藤平は7番右翼で先発。試合は雷雨で2度の中断を挟み、石川が2回途中で崩れた。逆転3ランを浴び、平田徹監督(33)が当初描いていた3回を投げ切ることなく、藤平にマウンドを譲った。

 しかし、2死一、二塁で登板した藤平も気持ちの準備ができていなかった。「石川がいい調子だったので、2回が終わってからブルペンに行こうと思っていた」。代わりばなを痛打されこの回5点を奪われた。藤平は6回1/3を投げ4安打7三振無失点。この日のために習得したシンカーも解禁したが、序盤で決定的な点差が開いた。父武美さん(41)は今年、独学でトランペットを学びスタンドから息子を後押ししていた。藤平は「親にも感謝しています。甲子園は楽しかった。この後はプロ野球選手を目指してやっていきたいです」とプロ志望を宣言した。

 神奈川大会で14本塁打の新記録を作った打線は寺島の緩急にやられ6安打、1点しか奪えなかった。東北(宮城)戦で本塁打を放った公家主将は9回に1安打を放ったが「自分の間合いで打てなかった」と振り返った。新チームには、神奈川大会決勝で2ホーマーの増田、横浜スタジアムの電光掲示板直撃弾を放った万波らがいる。後輩たちが、藤平の笑顔と、今日の負けを無駄にするわけがない。【和田美保】

 ▼全員奪三振 横浜が石川-藤平の継投で記録。13年に前橋育英・高橋光が岩国商戦でマークして以来28度目。

 ▼無失策試合 横浜-履正社戦で記録。今大会3度目。