聖光学院(福島)の主将で1番打者の松本康希内野手(3年)が、チームの勝利を大きく引き寄せた。初回に左前打で出塁し、二盗にも成功して先制のホームを踏んだ。3安打と本塁打が出ればサイクルヒットの活躍で、三塁の守備でも堅守を発揮。8強入りで、東北勢の悲願「大旗の白河越え」に1歩近づいた。

 リードオフマン松本の攻めの姿勢が、東邦(愛知)のエース右腕藤嶋健人(3年)の立ち上がりを揺さぶった。先頭打者として左前打で出塁した初回。3球目にノーサインで二盗を試みた。「狙っていた。相手が強いのは分かっていた。自分たちが仕掛けないと勝てないと思った」。鮮やかに成功させると、5球目に暴投で三塁へ進塁。3番加納皐(3年)の右前先制打を生み出した。

 試合前に仕掛けていた。先攻後攻を決めるじゃんけんに勝った。「いつもは勝ったら後攻を取るけど、先取点が欲しかった」と先攻にした。先発投手は今夏初登板の鈴木駿。松本は「駿を楽に投げさせてやりたかった」と、自ら出塁してその思いを現実にした。三塁の守備では5回に三塁線への打球を、7回は三遊間を抜けそうな強い当たりを好捕してもり立てた。

 春4度の優勝を誇る東邦に対し、「ガツガツ行く」と、選手同士でも「攻めの姿勢」を確認していた。初回のファウル、勝ち越し点につながった5回の左越え三塁打とも、初球をフルスイングした。「今日はいいところに飛んだ」と照れたが、8回の中越え二塁打も3球目と、早いカウントから積極的に捉えた。

 聖光学院が敗れていれば、07年以来9年ぶりにみちのく勢が3回戦までに姿を消すところだった。最後のとりでが8強入りで、東北勢のレベルの高さを示した。「夏一番のベストゲーム」と胸を張った松本は「自分がプレーヤーである以上、一番上を目指している」と言い切った。チーム初の4強から「大旗の白河越え」へ、まだまだ攻め続ける。【久野朗】

 ◆松本康希(まつもと・こうき)1998年(平10)7月8日、兵庫県生まれ。小1で野球を始め、松崎中では宝塚ボーイズに所属。聖光学院では2年秋からベンチ入り。168センチ、70キロ。右投げ右打ち。家族は両親、姉。