「エースで主将」対決を制し、準々決勝進出だ。全国最多37度目出場の北海(南北海道)が、春夏連続出場の日南学園(宮崎)に4-1で競り勝ち、夏は22年ぶりの8強入りを決めた。エース大西健斗(3年)が初戦に続き、4安打1失点で完投。道勢としては準優勝した2006年の駒大苫小牧以来、10年ぶりで、道勢夏70勝目に花を添えた。今日18日第3試合(午後1時開始予定)で、クラーク(北北海道)を初戦で破った聖光学院(福島)と4強入りを争う。

 北海の背番号1は、どこまでもクールで、礼儀正しかった。2年生コンビによる連続長打で、3点を勝ち越して迎えた9回のマウンド。歓喜のフィナーレへ向けて、ギアを上げる。二ゴロで1死の後、140キロの外角高め直球、そしてカーブで2者連続空振り三振に仕留めると、にこりともせず、涼やかに整列に加わった。「叫ぶのは格好いいけど、あまり好きじゃないんです。相手あっての野球。まず、相手を敬わないと」。創部116年の歴史を誇る伝統校の主将として、喜びは胸の内にしまった。

 球がばらついた前日16日の投球練習とは、一変した姿を見せた。投げ合う相手左腕もエース兼主将。「同じ役職を担う身として、負けたくない」。ストライク先行でカウントを整え、粘り強く打たせて取った。1回2死三塁から直球を打たれ、今夏、初めて先取点を許して以降、左打者に対しては変化球の制球を重視。イニングを重ねるごとに、スライダーは切れ、直球は伸びた。4安打無四球で、初戦に続き1失点完投。9回には143キロを計測し「これまでは後半に失点が多かったけど、今日は後半に力を入れた。新たなスタイルを確立出来た」と、自身の進化に手応えをつかむ92球だった。

 主将のDNAが、息づく。昨秋、主将に就任してから、札幌大野球部で主将を務めた父亮人さん(46)から「(仲間を)マネジメントしろ」と助言を受けた。父は言う。「一匹オオカミのところがあるので、最初は心配でした。でも、後輩の親御さんから、誰が宿舎で健斗の洗濯をするか毎日じゃんけん大会が行われていると聞いて、とてもうれしく思いました」。15日の練習中に熱中症になり日陰で休んでいた後輩に「おまえ、ほんとカスだな」と言ったかと思えば、去り際に「ゆっくり休めよ」と優しく笑った。厳しい言葉の後には、優しい言葉を忘れない。ツンデレ主将は、チームメートの心をがっちりつかんでいる。

 昨秋、札幌地区予選初戦敗退から始まったチームが、全国8強。平川敦監督(45)は「本当に気持ちのこもった投球だった。なんとか1勝と思っていたのに、2勝出来るとは…」。準々決勝の相手は、今夏、北北海道代表のクラークが敗れた聖光学院に決まった。「いろいろな感情が湧く相手」と大西。敵を討ち、チームにとって戦後初の4強入りを狙う。【中島宙恵】

 ◆北海道勢の夏甲子園8強 南北を通じて、準優勝した06年駒大苫小牧以来、10年ぶり19度目。北海は、北海中時代の1922年全国中学優勝大会ベスト8以来、通算10度目。北海の最高成績は28年のベスト4。

 ◆北海の94年ベスト8VTR 1回戦で優勝候補といわれた宇和島東(愛媛)に逆転勝ちで、30年ぶりの勝利。2回戦は史上初の南北北海道対決となった砂川北戦で大勝した。3回戦は小松島西(徳島)に打ち勝ち、北海道初の夏3勝で32年ぶりのベスト8進出。2年生右腕、岡崎が3戦連続で完投した。準々決勝で優勝した佐賀商に、雷雨で中断1時間33分の末、敗退した。