2年生の新4番がエースを救った。高校初の4番に抜てきされた北海(南北海道)・佐藤大雅捕手が、決勝打を含む3安打1打点でエース大西健斗(3年)を援護。同校4番だった兄龍世(富士大)の後を追い、平昌五輪より甲子園を選んだ2年生の猛打賞で22年ぶりの夏8強をつかんだ。札幌市内の北海高ではパブリックビューイングが行われ、約300人が応援した。

 冬の表彰台をあきらめた佐藤大を、真夏のお立ち台が待っていた。夏22年ぶりの8強の試合後。ヒーローインタビューに呼ばれたのは2年生の新4番。1-1の8回1死二塁で日南学園・森山の変化球をとらえ、左中間を破る適時二塁打で決勝点をたたき出した。

 「頑張って投げてくれる大西さんに、1点を届けたかったんです。ショートの上を抜けて、やったっ! って思いました」。打のヒーローはあどけない笑顔で殊勲打を振り返った。

 7番からの昇格を伝えられたのは、この日甲子園に向かうバスの中。本来の4番・大西が12日の2回戦・松山聖陵(愛媛)戦で左手に死球を受けた。エースで4番の負担、死球の影響を考慮し、平川敦監督(45)は打順を再考。「(佐藤大は)2番でも使ったことはありますが、チャンスで回ってくる。そういう星の選手なので」と2回戦無安打でも、佐藤大の生まれ持った星にかけた。

 新打順を告げられて驚いても、佐藤大は冷静だった。「7番でも4番でも、やることは同じ。後ろにつなぐバッティングをする」と心に決めた。いつもどおりに「コンパクトに振ろう」と指3本分、バットを短く持った。2回の初打席に中前に甲子園初安打。6回の第3打席は一塁内野安打。そして勝負の8回1死二塁、大西を助けたい一心で初の長打をたたき出した。5番の川村も右翼ポール際への2ランで続いた。

 バットを短く持ち、単打を狙う姿勢は、運命を変えた兄の影響。厚岸真龍中では野球とスピードスケートの両立で、卒業後は平昌五輪を目指して釧路市内の高校に進むつもりだった。だが北海の4番だった兄龍世は甲子園に届かず、敗退。兄の夢を追う人生にシフトし、兄と同じ4番を初めて務めたこの日、3安打1打点の結果を出した。「大西さんに“頼むぞ”と言われていたので」。平川監督に「4番・佐藤大」を決断させた“星”は、人を助ける星でもあった。【堀まどか】