さあ、54年ぶりの日本一だ。作新学院(栃木)が、10-2で明徳義塾(高知)を破り、春夏連覇した1962年(昭37)以来、54年ぶりの決勝進出を決めた。4試合連続先発のエース今井達也投手(3年)は、最速151キロをマークするなど、5回5安打2失点で要所を締めた。打撃でも3安打1打点を記録し、15安打10得点の勝利に貢献。今日21日の決勝は、北海(南北海道)と対戦する。

 今井の前には、いつもと違った風景が広がっていた。3試合連続完投中の絶対的エースが、今大会初めて5回で降板。右翼の守備位置から、54年ぶりの決勝進出を見届けた。

 「本当はもう少し長いイニングを投げたかったけど、まだまだ甘いです。体力面でもう少しタフにならないといけない。いつもとは違った景色でしたけど、野球は9人でやるもの。難しいボールでも捕ろうと思いました」。試合を終えると走って整列に加わり、握手を交わして、笑った。

 酷暑の甲子園での連投。休養日だった前日19日は、ただ1人全体練習には加わらず、宿舎近くの施設で疲労回復に努めた。酸素カプセルに1時間20分入り、マッサージを受けた。

 最善は尽くしたが、序盤から体は重く、ボールに本来の切れはなかった。ただ、それでも崩れないのがエース。2点を先取した直後の1回、1死満塁のピンチを招くと、ギアを上げた。151キロ、151キロを連続で投げ込み、4万2000人が集まった聖地を沸かせた。最後は遊ゴロ併殺打に切り、「点を取った後のイニングに点を取られてはいけない」と言った。下半身に疲れが出たという3回にソロ、4回に犠飛で2点を失ったが、小針崇宏監督(33)は「ランナーを背負いながらの苦しいピッチングでしたが、最少失点に抑えてくれた」と評価した。

 6回からは左腕の宇賀神陸玖投手(3年)、9回からは入江大生内野手(3年)が今大会初登板し、継投で逃げ切った。決勝を前に、2人の投手が甲子園のマウンドを経験したことも大きい。今井は「今日5回で降りたのも、明日に向けての準備。(決勝は)できれば完投したい。栃木県に優勝旗を持って帰りたい」と宣言。今大会「ビッグ3」と称された横浜(神奈川)藤平、履正社(大阪)寺島、花咲徳栄(埼玉)高橋の3人は、いずれも敗れた試合は先発を回避していた。今井にも、疲れはある。それでもエースとして、最後まで先発のマウンドに立つ覚悟だ。【前田祐輔】