リードオフマンが躍動した。北海(南北海道)の1番小野雄哉遊撃手(3年)が、勝利をたぐり寄せる貴重な適時打を放った。3-0の5回2死三塁。直球を左前に運び、4点目を挙げた。終盤1点差に迫られたが、この1点が決勝点となった。守備でも好プレーで主戦大西をもり立て、初戦の松山聖陵(愛媛)戦のサヨナラ打に続き、チームに大きく貢献した。

 効果的な一打だった。5回2死三塁。粘って8球目。小野はフルカウントから直球をノーステップで振り抜いた。春以降、やめていた打法を平川監督に助言され再開。「球もよく見えて、コンパクトに振れた」。適時打となり、スコアボードには4点目が刻まれた。12打席ぶりの安打は、結果的に決勝点となる適時打。2回戦のサヨナラ打に続き、再び勝利の立役者の1人に躍り出た。

 守備力も安定していた。9回2死一塁。初の決勝まであとアウト1つ。終盤から熱中症に襲われていても、最後はびしっと決めた。打球が飛んでくると前へ突き進み、素早くさばいて遊ゴロで試合終了。4戦連続で投げきったエース大西らチームメートとほほ笑み合った。「守りで貢献しようと思っていた」の言葉通りのプレーを、大舞台でも披露した。

 兄弟愛が聖地への道をつないだ。美幌町出身で、兄雅哉さん(北海学園大4年)と札幌市内で2人暮らし。夕食は毎日、兄が母美香さん(51)の考える献立で作ってくれる。小野が作りたてにこだわるため、帰宅後の午後10時からでも唐揚げを揚げてもらう。「みんなにお世話になっている。迷惑を掛けちゃいけない。やる気になる」と感謝を力に変えている。

 今冬に、野球選手では珍しいジャンパー膝(膝蓋=しつがい=じん帯炎)を発症。痛みと戦いながらもチームを引っ張ってきた。夢の日本一まであと1勝。「自分が出塁すれば、流れが作れる。甲子園でもう1試合できるんで、楽しみたい」。頼もしさが増したリードオフマンが決勝の舞台でも暴れる。【保坂果那】

 ◆北海道勢の対栃木県勢 夏の甲子園では初対戦。春は北海が88年3回戦で宇都宮学園(現文星芸大付)と対戦し、2-6で敗れている。