今秋の決勝戦は、13年春から12大会中11大会で対戦している聖光学院と日大東北の「名勝負数え唄」となり、5-3で聖光に軍配が上がった。6番仁平勇汰外野手(2年)が初回に先制中前打、9回にソロ本塁打を放つなど、3打数3安打でチームを2年連続12度目の優勝に導いた。一方の日大東北は初回に3失策から3点を失い、流れをつかめなかった。両校は3位決定戦で福島商に2-1で競り勝った学法石川とともに東北大会(10月14日開幕、山形)に出場する。

 勝敗を分けたのは、ライバルとしての「温度差」と、勝負どころでの戦い方の差だった。1回表、聖光は相手の内野失策でつくった2死満塁のチャンスに6番仁平がこたえた。中前適時打を放つと、返球ミスも重なり一気に3点先制して主導権を握った。今秋からベンチ入りした仁平は「自分の持っている以上の力が出た。相手がどことか関係ない」とライバル対決にも、平常心で力を発揮した。

 一方の日大東北先発左腕・半田雄瑚(2年)は下を向いた。「いつもなら処理できるゴロもミスしたり、初回に限っては自分たちの力が出せなかった。エラーは出るもの。出した走者を打たれた自分が悪い」。日大東北の中村猛安監督(37)も「聖光のユニホームにびびらないように練習をやってきたけど、おじけづいてしまった部分はあった」と振り返った。

 2回以降は展開が硬直。2点差のまま迎えた終盤戦の攻防で差がついた。日大東北は8回裏に攻め立て2死満塁。6番伊左治順外野手(2年)が左前打を放ち1点をかえすが、二塁走者の鈴木大資内野手(1年)が三塁をオーバーランし、タッチアウト。走塁ミスで反撃のチャンスをつぶした中村監督は「走者が予測してなかった。コーチャーともっとコミュニケーションをとらないと」と悔やむ。

 一方の聖光は直後の9回表、6番仁平が右中間ソロ本塁打を放ち、リードを2点差に広げた。「流れを変えたかった。つなぐことだけを考えた延長線がホームラン」。ミスが出た後の回で被弾した日大東北の磯上海大投手(2年)は「外スラを打たれた。相手の方が上手と認めざるを得ない」と白旗を上げた。

 失点直後の得点は聖光の「お家芸」だ。今夏の福島大会決勝でも8回表に光南に2点勝ち越されるが、その裏に4点とって優勝した。聖光の斎藤智也監督(53)は「それがウチの伝統ってとこもあるからね」と認める。劣勢でも自分たちのやるべき野球を貫ける粘りが、夏10連覇の証しだ。

 戦前、斎藤監督は「今年1年を占う一戦になる」と慎重に話していたが、ふたをあければスコア以上に聖光の強さが際立った。主将の小泉徹平内野手(2年)は胸を張る。「秋の優勝とか考えてなかった。1戦でも多くやって経験を積みたかった。今大会を通じて粘れるようになってきた」と、平然と言い切れるのが聖光の強さだ。【高橋洋平】