仙台育英(宮城1位)が盛岡大付(岩手1位)を6-2で下し、2年ぶり9度目の優勝を果たした。これで明治神宮大会(11月11日開幕)出場が決まり、2年ぶり3度目の優勝を狙う。試合は主将で1番の西巻賢二内野手(2年)が活躍し、9回には3番手でマウンドに上がり無失点で締めた。盛岡大付とともに出場が確実視される来春の第89回選抜高校野球(甲子園)は1月27日に出場校が発表され、3月19日に開幕する。

 西巻が口火を切り、西巻が締めた。俺たちが東北王者だ! 1回2死一、三塁。左前打で出塁していた三塁走者の西巻は狙っていた。「送球が浮いたのを見てスタートした。あそこは行くしかない」。一塁走者が二盗を仕掛けると、相手捕手の送球が上ずる間に本塁を駆け抜け先制(記録上は重盗)。チームに勢いをもたらすと、9回は自らマウンドに上がって仁王立ちだ。「優勝をイメージしていた。最後まで粘り強い戦いができた」。堂々と冷静に話す西巻からは、王者の風格が漂っていた。

 名取北との秋の県初戦は1-0で辛勝発進だった。15年夏の甲子園準Vに輝いた2学年上の佐藤世(現オリックス)、平沢(現ロッテ)の世代も同じく、秋の県初戦で仙台西に1-0と苦戦していた。名取北戦後のミーティングで佐々木順一朗監督(56)が発した「世那、平沢世代と同じスタートだよ」の言葉に、力のない自分たちの世代を重ね、過信したチームメートもいた。その日の夜の選手間ミーティングで主将の西巻が一喝した。

 「自分たちは世那さん世代ではない。このままじゃ勝てない。そんなに甘くない」。この日、2安打2打点で勝利に貢献した7番前田颯太内野手(2年)は証言する。「きっと大丈夫、という気持ちがあった。過去のジンクスにとらわれず、自分たちの力でやっていくしかないと思えた」。チームの迷いが消えた瞬間だった。

 目の色が変わった。心が入れ替わったチームに西巻は「練習での1球の集中力が変わった」と、手応えをつかんで東北大会に乗り込んだ。結果的に世那世代と同じく優勝に輝いた。西巻は先を見据える。「神宮で優勝してセンバツに行く」。佐藤世、平沢クラスのプロ注目選手はいない。でも大丈夫。今年のチームには、西巻がいる。【高橋洋平】