さわやかな「慶応ボーイ」の誕生だ。今夏の全国高校野球選手権(甲子園)で、エース兼主将として、古豪北海を初の決勝へ導いた大西健斗投手(3年)が5日、難関の慶大環境情報学部にAO入試で合格した。さっそく、東京6大学リーグに所属する硬式野球部への入部を希望。V6岡田准一似のイケメンとして甲子園を沸かせた右腕が、文武両道の名門で、神宮のアイドルを目指す。

 すっかり髪が伸び、大人の表情を見せたイケメンは「安心しました」と、柔らかい笑みを浮かべた。創部116年目の北海を、エース兼主将として夏の甲子園初の準優勝に導いた大西は、パソコンの画面に映し出された「合格」の2文字に、胸を躍らせた。この日は、AO入試で受験していた慶大の合格発表。インターネットで合否を確認し「東京6大学で野球をしたい気持ちが強かった。勉強も野球も、どちらも頑張りたい」と、さっそく硬式野球部への入部希望を明かした。

 この夏、人生が大きく変わった。「甲子園で自分なりに結果を残すことが出来て、自信になった」。大会終了後に意思を固め、ほとんどの時間を受験対策に費やした。慶大は、巨人高橋由伸監督ら、多くのプロ選手を輩出している名門。「慶大は(野球の)センスある人ばかりで、選手層も厚い。現段階で、プロを目指すかは分からない」としながらも「野球以外も、すごい人たちが集まって来るので、新たな刺激や貴重な会話が出来るのが楽しみ」。グローバルに活躍するビジネスマンに憧れた幼い頃。夢の選択肢が、ぐっと広がった。

 中学時代まで外野手。高校でも、もともと4番を打つなど打撃センスには定評があり「投手としても、打者としても頑張りたい」と意気込む。DH制を採用しない東京6大学リーグは、最適な環境だ。甲子園の決勝以降、痛めた右肘の治療で、投球練習は再開していないが「もう痛みもないし、大学へ向けて練習をしていきたい」。慶大には、今春センバツに出場した札幌第一の長門功内野手(3年)が一足早く合格を決めており、共闘も楽しみだ。

 リーグ戦の舞台は、大学野球の聖地、神宮。端正な顔と、対戦相手を敬う礼儀正しさで高校野球ファンの心をつかんだ右腕は、「慶応ボーイ」となって、新たな物語を紡ぐ。【中島宙恵】

 ◆大西健斗(おおにし・けんと)1998年(平10)11月17日、札幌市生まれ。小学4年から野球を始め、北海入学後に外野手から投手に転向。1年秋にベンチ入り。2年夏、背番号10で甲子園デビューした。背番号1の今夏は甲子園全5試合に先発。1回戦から準決勝まで4試合で完投し、準優勝の立役者となった。直球は甲子園準決勝で144キロを記録。182センチ、78キロ。右投げ右打ち。

 ◆慶大 福沢諭吉のもと開校した蘭学塾が起源。首都圏に6つのキャンパスを有する。1888年(明21)に創部した野球部は、1903年(明36)に早大との第1回早慶野球試合(現在の早慶戦)を開催。東京6大学連盟発足の礎となった。戦前含めリーグ優勝34度、全日本選手権優勝3度、明治神宮大会優勝3度。OBに巨人高橋監督ら多数輩出。現監督は元近鉄の大久保秀昭氏が務める。