3月19日から甲子園で行われる第89回センバツの選考委員会が27日、大阪市内で開かれ、出場32校が決定した。昨秋の明治神宮大会、近畿大会王者の履正社(大阪)は3年ぶり7度目の出場が決定。今秋のドラフト候補として注目される安田尚憲内野手(2年)は、明治神宮大会で戦った早実・清宮幸太郎内野手(2年)との再戦を望んだ。再び早実を倒し、念願の甲子園優勝へ-。組み合わせ抽選会は3月10日に行われる。

 視線の先には、同校悲願の甲子園Vをとらえているに違いない。「甲子園で優勝を目標にやってきた」。センバツ決定の報に喜んだのも一瞬、安田の表情はすぐに引き締まった。倒すべきライバルがいる。清宮について問われると、真っすぐに前を見つめながら答えた。「注目してもらえるのはうれしい。清宮君に負けないように、練習して同じレベルで戦えるように」。昨秋の明治神宮大会以来、高校通算78発の清宮と、再び同じ舞台に立つ。

 早くから注目され1年夏から甲子園出場した清宮とは対照的な道を歩んできた。生まれた時の体重は4300グラムと体格には恵まれたが、運動神経はイマイチだった。水泳で小6の時に全国2位になった兄・亮太さん(29=三菱重工名古屋)に比べ安田は一般コース。逆上がりも出来なかった。

 兄を追い、小1で入った「豊津東少年野球団」でも苦労。だが、思いは一筋だった。父・功さん(55)に「お前どないすんねん。どのくらいの気持ちでやるねん」と尋ねられ「やるからにはプロ目指してる」と強く宣言。中学3年間でも本塁打4、5本というが、決して野球をあきらめず、岡田龍生監督(55)のもと、履正社で才能が開花。高校通算45本塁打を打つまでになった。

 昨秋の明治神宮大会・決勝の再戦を、甲子園の舞台で夢見る。「1回戦では当たりたくない」と笑いながらも「甲子園でもう1回やりたい気持ちはある」。本人は、まだ清宮レベルではないと謙遜するが、パワーと飛距離では決して負けてはいない。昨秋92キロだった体重は95キロに増えた。昨夏の甲子園では12打数4安打に終わったが「97キロぐらいにはしたい」とまだまだパワーアップし、爆発してみせる。今秋ドラフト候補の1人。清宮を再び倒し、履正社を、「安田」の名を広める挑戦が、2カ月後に待っている。【磯綾乃】