“暴れん坊将軍”襲名だ-。第89回選抜高校野球(19日開幕、甲子園)に出場する札幌第一(北海道)は8日、和歌山・紀三井寺球場で初芝橋本(和歌山)と今季初の練習試合2試合を行った。5番と1番に入った今野克則中堅手(2年)が2試合で9打数6安打を放ち、チームの2連勝に貢献した。中学までバレーボールとの二刀流をこなした183センチのヒットメーカーは、暴れん坊将軍こと徳川吉宗を輩出した城下町・和歌山で、甲子園での大暴れを誓った。

 悪党を一太刀で仕留める暴れん坊将軍こと吉宗のように、今野のバットが、鮮やかにボールを捉え続けた。5番に入った初芝橋本との第1試合の第1打席は、低め変化球を拾うようにライト前へ運ぶ。第2打席で直球をセンターにはじき返すと、第4打席は変化球を中前に落とす。四球と犠打を挟んだため、3打数3安打。「(屋内の打撃)マシンではダメでしたが、(屋外で)人が投げるようになって、タイミングが合うようになった」と、好調子をそのまま、今季最初の実戦に持ち込んだ。

 第2試合でも勢いは止まらない。「出塁率の高く、足の使える選手を先頭に入れたかった」という菊池雄人監督(44)の1番起用に応えて6打数3安打。2試合連続の猛打賞で、チームの今季2連勝を呼び込んだ。「5番の方が気持ちは楽ですが、1番も大丈夫。どちらでもいけます」と会心の表情で言った。

 中学までは週4回野球でクラブチームの練習に通い、週3回は学校でバレーボール部に参加した。ポジションは長身を生かしたセンターで、点取り屋。「頼むからバレーボールに専念してくれ」とお願いされるほど活躍したが、バレーはあくまで野球の練習だった。「サーブのレシーブは、野球の外野フライより近い距離で、しかも変化するボールを拾わないといけない。いい練習にはなりました」と苦笑いする。

 昨年のセンバツ大会は代走で出場したが「何もしていない」気持ちが強い。享保の改革などで歴史に名を残す8代将軍が誕生した土地で今年の打ち初めに成功、そのままの勢いで、背番号8をつけて聖地に討ち入る。「(選択授業で)日本史をとっていますから、もちろん徳川吉宗のことは知っています。甲子園でも暴れますよ」。快刀乱麻のバットさばきで、ライバルたちを成敗する。【中島洋尚】

 ◆江戸幕府8代将軍徳川吉宗 江戸幕府8代将軍の徳川吉宗は1684年(貞享元)、紀州藩第2代藩主の徳川光貞の四男として、徳川家菩提寺報恩寺の近くにある吹上邸(現在の和歌山県和歌山市吹上)で誕生したんだ。末っ子だったけど相次ぐ兄たちの死で、第5代紀州藩主に。1716年(享保元)、将軍に就任して「享保の改革」で幕政を立て直したんだよ。吉宗が主人公のテレビ時代劇「暴れん坊将軍」(テレビ朝日系)は78年から02年まで続いた人気番組だよ。吉宗(松平健)が「貧乏旗本の三男坊」徳田新之助に姿を変えて、悪人を「成敗っ!」するんだ。実際の吉宗も小さいころは相当な暴れん坊だったと言い伝えられているよ。