プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月25日付紙面を振り返ります。2014年の3面(東京版)は春の甲子園で智弁学園(奈良)岡本和真内野手の1試合2本塁打を伝えています。

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<センバツ高校野球:智弁学園7-2三重>◇24日◇1回戦

 春の甲子園に新怪物が現れた。智弁学園(奈良)のドラフト上位候補、岡本和真内野手(3年)が史上19人目の1試合2本塁打をマークし、7-2で三重を下した。第1打席はバックスクリーン、第3打席は左翼席に運び、星稜(石川)時代の元ヤンキース松井秀喜氏(39)、PL学園(大阪)の「KKコンビ」らに並んだ。明徳義塾(高知)は岸潤一郎投手(3年)が延長15回188球を投げ抜き、サヨナラで智弁和歌山を破った。関東第一(東京)は逆転で美里工(沖縄)を下した。

 高め真っすぐ、3ボール2ストライクからの6球目だった。岡本は力いっぱい振り切った。1回2死。打球はグングン伸び、バックスクリーンに飛び込んだ。甲子園初アーチに、岡本は「相手ピッチャーのテンポが速かったが、自分のペースで打てた。強い打球をセンターに返そうという意識で振り抜いた。思わずガッツポーズが出てしまいました」と、右拳を大きく突き上げてほえた。

 6回には再びスタンドをどよめかせた。3打席目に左翼へ放った1発は、打った瞬間それと分かる一撃。高校通算59本目で、新怪物と呼ぶにふさわしいオーラを漂わせてベースを回った。主砲の活躍に、小坂将商(まさあき)監督(36)も「1本目は打って欲しいイメージがそのまま映像になった1発。本当にびっくり」と声を上ずらせた。

 昨秋は4番として近畿大会8強。しかし、あえてこの日は3番に座った。「初回に打順が回るので相手にプレッシャーをかけられるし、チャンスになる」(小坂監督)。初回2死走者なしから岡本の本塁打で先制し、狙いが的中した。

 幼少期からのスパルタ教育が実を結んだ。3歳の頃から兄道明さん(25)と自宅の座敷で素振りに励んだ。夜には窓を鏡代わりにしてフォームを確認。小学生時は100本だったが、中学生時には400~500本に増えた。兄の厳しさも増し、泣きべそをかきながら猛特訓で鍛えられた。

 甲子園デビューで見せた2発。名刺代わりには十分なインパクトだが、新怪物にとってまだ伝説の序章にすぎない。次戦は大会屈指の左腕・田嶋大樹投手(3年)擁する佐野日大(栃木)と激突する。「もう1度ベースを回れるなら回りたい。対戦する限りは勝ちたいし、1試合でも多く甲子園で野球がしたい」。“岡本劇場”の幕は開いた。

※記録と年齢など、表記は当時のもの