盛岡大付(岩手)の臼井春貴外野手(3年)が、甲子園のマウンドに意欲を見せた。21日、第89回選抜高校野球大会第3日は降雨のため順延。チームは25日にずれた智弁学園(奈良)との2回戦に向けて、兵庫・西宮市内の室内練習場で調整した。20日の高岡商(富山)との1回戦、9回表に臼井が見せたライトからの好送球に、プロのスカウトが熱視線を送っていた。3月初旬の沖縄遠征で最速147キロを計測した、成長著しい3番手投手が救世主になる。

 チームのピンチを救った「レーザービーム男」が、聖地のマウンドを熱望した。高岡商戦の9回、臼井は右翼からの好送球で、タッチアップした二塁走者を三塁で刺した。「あそこで1点入ったら流れを持って行かれてしまう。絶対刺してやるって思っていた」と胸を張りながらも「マウンドに上がりたかったすね」と本音を漏らした。

 臼井の強肩にプロも目を奪われた。広島近藤スカウトは「あの送球を見て、投手として甲子園のマウンドに立っている姿を見たくなった」という。臼井は現状では3番手投手だが、3月初旬の沖縄遠征では最速を2キロも更新する147キロを計測。センバツ前最後の練習試合となった17日の天理(奈良)戦では高校初完封をマークした。沖縄で臼井の投球練習をみて「スピンの利いた球筋に驚いた」というオリックス上村スカウトも、「甲子園でぜひ見たい」と登板を熱望した。

 臼井には燃える理由もある。高岡商戦に先発した三浦瑞樹投手(3年)、エースの平松竜也投手(3年)は中学の横浜瀬谷ボーイズのチームメート。当時は臼井がエース格を務めていたが、高校入学後は2人に先を越されてしまっていた。巻き返すために、この冬の間は懸垂を40回2セットで筋力アップを図り、体重は72キロから78キロまで増えた。「冬は自分が一番練習してきた自信がある」と言い切った。

 初戦は三浦瑞、平松の両投手が12安打9失点と踏ん張りきれなかった。臼井は「関口監督からも準備しとけと言われている。投手陣を助けたい」と意気込む。思わぬ形で「剛腕」を披露した「第3の男」が救世主になってみせる。【高橋洋平】

 ◆臼井春貴(うすい・はるき)1999年(平11)7月18日、横浜市生まれ。小5から野球を始め、下瀬谷中では横浜瀬谷ボーイズに所属。盛岡大付では1年春からベンチ入り。177センチ、78キロ。右投げ右打ち。