史上5校目の夏春連覇に挑む作新学院(栃木)が好発進した。エース左腕の大関秀太郎投手(3年)が7回5安打無失点の快投。12安打を放ち、48年ぶり出場の帝京五(愛媛)に9-1で快勝した。

 6回2死満塁のピンチ、大関はあの夏を思い返した。帝京五の4番篠崎をカウント2-2と追い込む。「強気に行く」。真っ向勝負の直球で左直に抑えた。2回1死一、三塁では三塁手の「走った」の声を聞き、スライダーを低めのボールゾーンに投げ、スクイズを阻止。冷静さも兼ね備え、待ち焦がれた甲子園のマウンドで7回無失点と好投した。

 昨夏、作新学院は西武今井を擁し全国を制した。だが、大関には「人生で一番悔しかった」と思う夏だった。栃木大会はメンバー入りも、甲子園ではベンチを外れ、練習補助役でチームに同行した。甲子園の決勝でボールボーイを任され、今井から「来年いけよ」と背中を押されたのも転機の1つだが、汗にまみれた日々が、大関を成長させた。

 運命だったのか、夏は初戦の尽誠学園(香川)から3試合連続で相手エースが同じ左腕だった。対策として炎天下で連日の打撃投手を務めた。普通は打者の打ちやすい球を投げるが、大関は本気で投げた。「たまに抜いたり、内角に投げたり。日本一の打線なんで反応を見たり、時には抑えるつもりで」。ベンチから外れても、大関は甲子園で勝負していた。

 夜は河川敷に1人で出掛け、素振りやシャドーピッチングを繰り返した。汗びっしょりで宿舎に戻り、偶然会った同級生の鈴木を「すごい汗。どこ行ってたの?」と驚かせた。好きな言葉は、元広島の黒田博樹氏が座右の銘とする「耐雪梅花麗」。「『苦しまずして、栄光なし』という意味だと聞いて、いい言葉だと思った」。甲子園で投げる、この日を待っていた。

 小針監督からは「大関から横綱になれ」と大きな期待を受けるが「まだまだ、僕は全然です」と殊勝に話した。夢に見た甲子園のマウンドは「圧力というか、普通の球場では味わえない感覚だった」。大関はこの春、あの夏の苦しみを栄光へと変える。【久保賢吾】

 ◆夏春連覇へ 昨夏優勝の作新学院が勝利。前年夏の王者が翌年センバツに出場するのは延べ37校目で、初戦突破は26校目。夏春連覇は83年池田まで過去4校が達成している。

 ◆無失策試合 作新学院-帝京五で記録。今大会初。