2年ぶり12度目出場の仙台育英(宮城)が、昨秋の北信越王者・福井工大福井に4-6で敗れた。佐藤由規投手(現ヤクルト由規)を擁した07年春以来10年ぶりの初戦敗退。それ以降の春2回、夏6回の甲子園はすべて初戦突破していた。エース左腕・長谷川拓帆(3年)が9回1死二塁から自らのけん制悪送球で三塁へ進塁を許し、その直後の暴投で決勝点を献上した。初回に4長短打で2点を先制するも2度追いつかれ、9回に押し切られた。

 春夏通じて8大会連続で初戦を突破中の東北王者・仙台育英が、自滅した。4-4の9回1死一塁。長谷川が相手9番打者に投じた、わずか3球の間に勝敗が決した。初球に二盗され、2球目後の二塁けん制はセンターに抜ける悪送球。三塁へ進塁を許した直後の3球目に暴投で決勝点を献上した。長谷川は「捕手とコミュニケーションがとれてなかった」とうなだれた。

 小さなミスが相次いだ。9回に二塁走者の大きいリードを見て、けん制のサインを出した斎藤育輝(なるき)二塁手(3年)は「センターの佐川(光明、3年)にもけん制を伝達しておけば、悪送球でも佐川がもっと早くカバリングできた。1球で流れが変わってしまった」と悔やんだ。長谷川の暴投を防げなかった渡部夏史(なつひと)捕手(3年)も「空振りを取るために沈むスプリットを要求した。止められたボールだったけど、体が浮いてしまった」と唇をかんだ。

 大会前に出た故障者が痛かった。昨秋は抑えを務めた西巻賢二内野手(3年)は右肘に違和感があり、今春の練習試合では登板なし。8回終了時点で137球も投げていた長谷川に、代役を送れなかった佐々木順一朗監督(57)は「西巻が投げられない中で、投手を代えるところまでやりきれなかった」と話した。1月に左眼窩(がんか)底を骨折した尾崎拓海(3年)は昨秋の「4番捕手」。復帰はしたが先発には戻れず、打線の迫力不足を招いた。

 チームで唯一、1年夏に甲子園決勝の舞台を経験した主将の西巻は「球場のムードにのまれた。甲子園は特別な感じ。優勝は本当に難しい。この悔しさは優勝しないと晴らせない」。試合後、18人全員が甲子園の土を持ち帰らなかった。攻守にレベルアップを果たし、夏で忘れ物を取り戻す。【高橋洋平】