西の大砲がいよいよお目覚めだ。「西の清宮」こと履正社(大阪)の3番安田尚憲内野手(3年)が2二塁打を含む3安打1打点で勝利に貢献。8-1で盛岡大付(岩手)を下し、3年ぶりのベスト4を決めた。大阪勢2校の4強入りは98年以来19年ぶり。今日30日に準決勝が行われる。

 ここまでのうっぷんを晴らすかのような打撃だった。履正社の主砲・安田が甲子園3戦目で目を覚ました。初回の第1打席。三浦瑞の直球をセンターに打ち返しての二塁打。6回には右中間へ鋭い打球の適時二塁打。「今日はいいスイングができた。真っすぐを狙ってて変化球も捉えられた」。8回にはスライダーに反応し、中前安打。満足そうに振り返るのも当然だ。

 1回戦は4打数1安打で、2回戦は3打数無安打に終わっていた。「正直焦りがあって、追い込まれてる感じだった」。知らず知らずのうちに持ち前の豪快な打撃は、小さなスイングになっていた。岡田龍生監督(55)が気付かせてくれた。「何を小さくなってるんや。せっかく甲子園に来たんだから大きく構えていけ」と、声をかけられた。助言通りこの日は大きく構えることを意識し、会心の結果につなげた。

 小さい頃から良きお手本がいた。兄亮太さん(29)は現在三菱重工名古屋硬式野球部で主将を務める。常に自分より先のステージでプレーする12歳上の兄は、野球の道を示してくれた。亮太さんから「野球をやるにしても英語が必要や」と聞けば、英語を必死に勉強した。安田は現在、毎食鳥のささみを食べているが、それも冬に帰省していた亮太さんから学んだもの。ただ、高校への進路のときだけは違った。亮太さんの考えでは他の強豪校だったが、かたくなに履正社を選んだ。そんな男が、履正社の甲子園初制覇のカギを握る男となっている。

 この日の試合後、2回戦で敗退した早実・清宮について聞かれた。「甲子園は何が起こるか分からない。(目の前の一戦以外のことを)気にして、油断につながったら(いけない)。履正社は履正社としてやっていく」。頂点まであと2勝。「100%の力で勝って優勝したい」。力強く言い切った。【磯綾乃】