「機動破壊」を見事に“破壊”した。昨年春夏4強の秀岳館(熊本)が、高崎健康福祉大高崎(群馬)の武器である「足」をまったく無視して機能させない作戦で、3季連続4強入り。2季連続で阻まれた「壁」の準決勝(対大阪桐蔭)に挑む。

 キーワードは「おおらかな野球」だった。相手は「機動破壊」が持ち味。足でかき回し相手を惑わせる作戦に対して、大技で得点し、神経を使わない守りで3季連続ベスト4の快挙をつかんだ。

 鍛治舎巧監督(65)は試合前、先発川端に告げた。「けん制はしなくていい。二盗、三盗されても本盗はないから。必要以上に考えなくてもいい」。本来の投球に専念させた。川端も「けん制はしてません。ランナー置いても打者に専念しました」。2点を先制した直後の1回裏はいきなり安打を許して盗塁と悪送球で無死三塁のピンチにも、後続を3者連続三振で切り抜けると、13奪三振の好投で完投した。

 打線でも鍛治舎監督は試合前に「悩める3番」木本にも告げていた。「考えすぎてるから、いいかげんに球を見て、いいかげんに打てと言いました」。昨年春夏4強メンバーも、今大会は9打数1安打1打点。まだまだ本調子ではなかったが「監督さんから言われたことを守って打った」と1回に先制2ラン。15安打9得点の猛攻を導き出した。どんなに機動力を使った攻撃をされてもガンガン打って突き放した。6、7回と盗塁をからめた失点を許したが1失点ずつ。投手も守備も慌てることなく後続を断ち切った。

 次は立ちはだかる「壁」を“破壊”する。昨年は春も夏も準決勝で敗退し、日本一の夢を絶たれた。「3年で日本一」。鍛治舎監督の目標がそこで絶たれていた。「二度あることは三度あるか。三度目の正直となるか、ですね」。試合後、勝利監督インタビューで準決勝への意気込みを聞かれる前に口に出てしまった言葉が「壁」への意識の強さを表していた。機動力野球を撃破した勢いは、頂点まで後押しする。【浦田由紀夫】