9回の打席に向かう直前も、三塁ベースコーチの「笑顔でいけ」とのゲキが聞こえ、ニヤッと笑った。4時間2分の大熱戦の中、前向きに、笑顔でグラウンドに立ち続け、チームを劇的なサヨナラ勝利に導いた。

 清宮が、ずっと求め続けた結果だった。昨秋の東京大会の日大三との決勝。チームはサヨナラ勝利を飾ったが、自身は5打席連続三振で沈黙した。「打点を稼ぐバッティングを」。あの日以降、口癖のように繰り返したここぞの一打を決勝の舞台、それも日大三を相手に成し遂げた。

 この日、記録を超えた西武中村も同じポリシーを持ち続ける。プロ野球の世界で本塁打を“おかわり”しても、チームが敗れれば「意味はない」と口にする。自身は高校3年夏の大阪府大会で6本の本塁打を放ったが、甲子園出場を逃した。「チームの勝ちにつながる1本」にこだわる姿は清宮も同じだった。

 チームは35年ぶり9回目の優勝を達成した。春の東京大会を制した主将は、夏の開会式で選手宣誓を務める。「勝った瞬間、思いました。やるからにはしっかりやりたいです」。神宮のカクテル光線に照らされ、清宮が輝きを放った。【久保賢吾】

 ▼早実・清宮が準々決勝の駒大高戦から3試合連続本塁打。清宮の公式戦3戦連発は昨秋の都大会以来2度目。神宮球場での本塁打は昨秋の明治神宮大会決勝(対履正社)に次いで通算2、3本目で、1試合2本は初めて。