辛勝でも試合巧者ぶりは健在だった。秋春連覇を狙う日本文理が1-0で糸魚川白嶺を振り切り、ベスト8に一番乗りした。8回に公式戦初の4番に座った松木一真外野手(3年)の適時二塁打で均衡を破り、投手陣も新谷晴(しんや・はると=2年)と稲垣豪人(3年)の4安打完封リレーで1点を守り抜いた。他に予定されていた4回戦7試合は、中越対村上桜ケ丘が6回ノーゲームになるなど、降雨の影響で今日7日に順延された。

 苦しんでも勝つ-。一瞬の判断力と勝負強さで、日本文理が接戦を拾った。記録に残らないファインプレーが、9回2死一、二塁の土壇場で光った。糸魚川白嶺の4番山本大樹外野手(3年)が高く打ち上げた打球が、一塁線へと上がった。これを途中から一塁に入った松木が目測を誤り、慌てて稲垣が追うも捕球せず。「一塁から『オーライ』の声が聞こえたけど、ファウルかなと。落としていたら1点が(相手に)入っていた」。打球はファウルゾーンぎりぎりに落ち、仕切り直しの次球で捕邪飛に仕留めた。

 上を向けば雨、下はぬかるむグラウンド。稲垣は微妙な打球の位置とを瞬時に判断しながら、高い方のリスクを避けた。0-0の6回から先発新谷をリリーフ。背番号「1」を任されて4月30日の初戦(2回戦)で先発するも、新発田農を相手に5回途中6失点で降板。汚名返上のこの日は4回を2安打無失点、9回無死一、二塁の大ピンチも抑えて、「2年生の新谷が頑張っていたので、3年生の自分もしっかりしなければと。気持ちを込めて投げることを意識しました」とホッとした笑みを浮かべた。

 そして背番号「17」の松木も、強打が伝統の「4番」を任されて奮い立った。0-0の8回1死一、二塁で、一塁ベースを直撃する適時二塁打。まだ1桁の背番号をもらったことはないが、途中出場の新発田農戦で同点の3点三塁打、3日の3回戦(巻総合)では本塁打と、結果で4番を勝ち取った。それでも「文理の4番はチームの軸。打たされた形のラッキーな安打なので、最低限の仕事しかできなかった」と自己採点は厳しかった。大井道夫監督(75)も「打てなくて情けない。フライばかり。松木の調子はいいけど、他が悪すぎる。帰って練習です」と、打撃陣に奮起を促した。【中島正好】