空知地区は、昨夏の甲子園に出場したクラークが11-0の5回コールドで岩見沢農を下し、初戦を突破した。主将の平野冬馬一塁手(3年)が、初回1死二、三塁の好機に先制の右翼線2点適時打を放つなど3打数1安打3打点。腰山拓斗捕手(同)も3打数2安打と勝利に貢献した。平野は2年春、腰山は1年冬に本州の強豪校から転校。高野連規定で1年間公式戦に出場できず、遅れてきた新戦力がクラークでの初公式戦で躍動した。

 平野は進学校でもある前籍校で勉強につまずき、転校を考えた。「どうしても野球は続けたかった」。両親と一緒に探し、出合ったのがクラークだった。小学校時代に全国制覇を経験した腰山は、上下関係に疲れ果て、部活から足が遠のいた。「楽しく野球ができ、甲子園に行ける環境」を求め、北海道に飛んだ。

 クラークでは練習は一緒だが、公式戦になると実力に関係なくスタンド観戦。平野は「1年間はとにかく我慢して、3年の最後の夏に甲子園に連れて行って」という母直子さん(48)の言葉を胸に裏方に徹した。腰山は今春卒業した捕手の岸誠也さん(18=専門学校生)の朝と夜の自主練習のパートナーとなり、昨夏の甲子園出場を陰で支えた

 佐々木啓司監督(61)は「(転校して)なくしたものを数えるより、今ある力を寄せ集めて歩き出す。それがクラークの精神」と校歌の一節を交えて、3年生で新天地デビューを飾った2人の働きをほめた。「つらい時もあったけど、公式練習では甲子園のグラウンドに立てた。今年の夏はあそこでプレーします」と平野。3カ月後の大舞台に思いをはせながら、まずは2年連続の春全道に狙いを定める。【中島洋尚】