日本文理が大勝で秋春連覇を飾った。14-1と投打で中越を圧倒。同点の2回2死一、二塁からロングリリーフした背番号「1」の稲垣豪人(かつと)投手(3年)が、10安打されながらも最速140キロの直球とスライダーを駆使し、無失点投球でV投手に輝いた。看板の強力打線は5回に6四球と5長短打を集めて大量10得点。準々決勝以降は7点差以上の大差をつける横綱相撲で、ライバルたちを寄せ付けなかった。上位4校が出場する北信越大会(ハードオフ新潟ほか)は6月3日に開幕する。

 日本文理・稲垣は雨でぬかるむマウンドでも、決して弱気な顔は見せなかった。「ピンチこそ、しっかり気持ちを込めた」。4回には安打と暴投で無死二塁としたが、連続空振り三振と一邪飛で切り抜けた。9回1死満塁も見逃し三振と二ゴロで、マウンドで優勝投手の感慨に浸った。「最後は疲れて、甘い球を投げて苦しい投球になった」と反省したが、最後の打者に139キロを投じるなど、課題の直球に進化を見せた。

 大井道夫監督(75)は「力強い球をコーナーに放れるようになった。それは成長」と評した。前日14日の準決勝・新潟明訓戦でもリリーフし、自己最速タイの141キロ直球を駆使して2回を完全救援、打者6人から4三振を奪った。今大会は全6試合に登板し、2回戦以降は16回1/3で無失点と、春エースの責任をまっとうした。

 選手層は投打とも厚い。現チームは看板の強力打線に加えて、投手の陣容も群を抜く。それでも今大会は、昨秋エースの西村勇輝(3年)と最速148キロの鈴木裕太(2年)がともに肘痛で登録メンバーを外れたが、チーム防御率は0・96。大井監督は「期待している投手がまだ2人いる。夏までには…。うまくいけば、北信越に間に合うかどうか。私も楽しみにしている」と目を細めた。そして、実質3番手だった稲垣も自信を付けた。昨秋の県大会も背番号「1」で、「(投手を)やるからには1番がほしい。負けるわけにはいかない」とライバル心をむき出しにした。大井監督は「優勝。それしかない」という北信越大会へ、そして自身にとっても最後の夏に向けて、エース争いを歓迎した。【涌井幹雄】