昨秋東北大会4強の酒田南に怪物1年生が現れた。身長190センチ、体重117キロの渡辺拓海投手が先発し、最速137キロの直球を武器に6回を3安打無失点の好投。山形工を9-0(7回コールド)で下す原動力となった。

 大きな体が、マウンドで仁王立ちしていた。ノーワインドアップから左手を肩より上に突き出し、真上から投げる豪快なフォーム。渡辺は打者24人に対しバントヒット2本、中前にポトリと落ちる安打1本に抑え込む。重い直球の威力に、相手打者は内野を越すのがやっとだった。

 「今日はコースを突くことを考えました。先輩たちに声をかけてもらって、とにかく全力で投げた」。堂々とした体つきとは対照的に、コメントは初々しい。入学時125キロあった体重を8キロ減量し、庄内地区1次予選準決勝・羽黒戦で公式戦デビュー。試合には敗れるも、8回2失点の好投をみせていた。

 4020グラムで出生。身長182センチの父健一さん(47)によると「幼稚園の頃から頭2つ飛び抜けていた」という。小学校時代はわんぱく相撲でも活躍。卒業時にはすでに180センチ、82キロあり、中2の冬に100キロを超えた。好きな食べ物は「カレーライスと唐揚げ」と言い、「毎日1リットルパック2本くらい飲んでいた」(健一さん)という牛乳でたくましく育った。

 鈴木剛監督(35)は「羽黒戦である程度めどが立った」とこの日の先発に渡辺を抜てき。「他の1年生投手と比べて体が出来上がっている。強気で直球を投げる度胸が魅力」と話した。昨秋東北4強の原動力になったエース左腕阿部雄大(2年)にも刺激となる。主将の豊川健太内野手(3年)も「普段はまだ1年生っていう感じ。マウンドでは頼もしい」という。「羽黒戦より緊張しました。今日は正直疲れました」と渡辺。入学からわずか2カ月で、周囲に大きなインパクトを与えたことは間違いない。【林野智】