浦和学院(埼玉1位)が2年ぶり6度目の関東王者に輝いた。今大会を通してクローザーを務めた左腕、佐野涼弥投手(2年)が8、9回を打者6人でピシャリ。1点をかえし、なおも同点で迎えた8回裏の打席では勝ち越しのスクイズを成功させ、投打で逆転を呼び込んだ。初優勝を狙った東海大相模(神奈川1位)はあと1歩及ばなかった。

 “ウラガクの大魔神”が「防御率0・00」のまま春の関東を制した。「スクイズを決められて、気分よく最終回のマウンドに上がれました。自信になります!」。浦和学院・佐野は8回裏1死満塁、この日初打席で勝ち越しの投犠打を決めると、9回をわずか10球で締めた。イニングまたぎで強打の東海大相模の2、3、4番打者を3連続三振。優勝投手になった。

 「全試合投げるとは思ってませんでした。疲れは全然ないです」と笑う初戦からの4連投。いずれも抑えで、計11回1/3を5安打無失点と各県代表校をねじ伏せた。奪った三振はイニング数を大きく上回る17個。それも投げたのは直球と縦スライダーのみだから驚異的だ。

 同じ左腕で13年センバツ優勝投手のOB、小島和哉投手(現早大)に憧れてウラガクの門をたたいた。昨秋は自己最速141キロの1年生エースとして先発を任された。だが関東大会初戦で横浜に5回10安打7失点とめった打ちされ、センバツ出場が絶望的に。「ずっと横浜にリベンジしたかった。東海大相模にも、3月の練習試合で9回4失点で負けたので」。球が速く、球種が多くないことからリリーフに回った今大会で、両校を直接下した。

 守護神として真価を発揮した佐野だが、夏の起用法は定まっていない。森士監督(52)は「1投手1完投くらいの能力を求めたい」と注文。左腕は「長いイニング投げられるスタミナと緩急を」とチェンジアップとカーブの習得に励んでいる。振り返れば今春、県大会初戦で9回2死まで聖望学園に負けていた。指揮官が32年ぶりの夏ノーシードを覚悟した崖っぷちからの成り上がり。戦うほどに、強くなる。【鎌田良美】