<君の夏は。>

 いつも、心の中で喜んでいる。二松学舎大付・鈴木沙耶マネジャー(3年)は、圧勝劇で8強入りを決めた独協戦の最中も、感情を爆発させるようなことはなかった。「邪魔しないように、なるべく冷静に見て応援したいんです」。だれに言われたわけでもないが、自然とそうしている。

 鈴木は、同校野球部初の女子マネジャーだ。保育園のころからテレビで甲子園を見ていた。野球が大好きになった。中3の夏、二松学舎大付が東東京大会決勝11度目の挑戦で悲願の初優勝を飾り、甲子園に初出場した。その映像を見てますます野球のとりこになった。

 女子マネジャーがいないことは知っていたが「野球部の力になりたかったんです」。だから、入学後は応援団に入った。学ランを着て応援したが、やっぱり近くでもっと役に立ちたかった。野球部長へお願いに行ったが、断られた。「(断られた)回数は覚えていません」と振り返る。それでも諦めなかった。約半年後、やっと市原監督の面接にこぎつけ、許しを得た。

 2年春にマネジャーになれたが、最初は何をしたらいいか分からなかった。「大きな声であいさつをして、気付いたことからやっていこうと思いました」。昨冬、補食のために初めておにぎりを握った。「1つ1つが大きいから三角に握るのが難しくて。でも、ささいなことでも『ありがとう』と言われると、うれしいです」とはにかんだ。

 1学年下にも女子マネジャーが入った。2度目の夏の甲子園出場へ向け、一緒にサポートを続ける。「次も勝ちたいです。落ち着いて応援します」。あと3勝で頂点。その時は、いっぱい喜びたい。【和田美保】