<君の夏は。>

 相洋(神奈川)佐藤洸希(こうき)マネジャー(3年)に涙はなかった。最後の夏は記録員としてベンチ入りし、スコアをつけながらナインに声をかけ続けた。横浜に7回コールドで敗れたが「後悔はないです。選手たちはよくやってくれた」と振り返った。

 昨年1月、体に異変が起きた。練習前にグラウンドで意識を失い、病院に運ばれた。その後も約半年は原因不明の頭痛や立ちくらみが続いた。思うように練習ができず、もどかしかった。「新チームになると退部を考えました。迷惑をかけると思いました」。そんな時、高橋伸明監督(32)から「マネジャーをやらないか」と声をかけられた。佐藤は「ここで野球がしたくて、頭を下げて入学させてもらった。家族には言いにくかった」と即答できなかったが、「この仲間と一緒にやりたい」という思いは消えなかった。

 父茂樹さん(42)に涙ながらに「与えられた役割をしたい」とマネジャーに転身する意向を話すと、父も涙したという。雑用だけではなく、守備練習のノッカーも担当。そんな献身的な姿に、昨年12月には同学年の部員全員からノックバットがプレゼントされた。大会2カ月前には、和地竜輝外野手(3年)と埜瀬(のせ)佑輝三塁手(3年)が「佐藤1人では厳しいかな。少しでも力になれれば」とサポートに回ってくれた。

 昨秋の県大会で引き分け再試合の末敗れた横浜にリベンジを果たすことはできなかった。それでも佐藤は「この舞台で横浜とできて良かった。僕は練習試合の打席にも立てませんでしたが、選手ではできない経験ができた濃い3年間でした」と、すがすがしく会場を後にした。【太田皐介】