99回目の夏。甲子園で本塁打が出まくっている。ポール際の本塁打よりも中堅や左中間、右中間への大きな1発が目立つ。大会第7日を終え26試合で37本。既に昨年の大会総本塁打数に並び、このままのペースで行くと68本。大会記録の06年の60本を超える。

 なぜこれほど本塁打が出るのか。15日の試合が中止順延となった複数の監督に聞いてみた。

 松商学園・足立監督 身体能力が上がっている。テレビで思い出の名場面集を見ても昔の選手とは体つきが違う。打撃は7~8割がタイミング。投手はタイミングをどう崩すか。力対力では打者が上。

 前橋育英・荒井監督 打撃技術を含めいろいろな面で上がっている。「このまま金属バットでいいの?」っていう感じです。

 明徳義塾・馬淵監督 パンチショットが入る。それだけの体力があるのか、投手の球威、制球力不足なのか。ただ打力、体力が向上しているのは間違いない。

 各監督ともに体力面のアップを理由に挙げた。ただ、それだけではない。指導者や選手の意識が変わったことも感じる。2試合で4本塁打を放ち前日14日に3回戦進出を決めた済美・中矢監督は「強く、遠くに」がチームの合言葉だと言った。

 毎年1月に行われるプロアマ合同の指導者講習会。2年前の講習会では講師を務めた往年のスラッガー、中村紀洋氏や大久保博元氏が「子どもたちに思い切りバットを振らせてください」と小、中、高校の指導者に熱く訴えている姿を見た。「当てろ、転がせ」から「フルスイング」へ。甲子園に響く鋭い打球音、そして見事な放物線。野球界の裾野から着実に意識改革が進み始めているのかもしれない。【福田豊】