今大会で勇退する日本文理(新潟)・大井道夫監督(75)の夏が終わった。

 32年の監督生活を締めくくる試合は0-1の惜敗。「意外な展開だったね」と、笑顔交じりに振り返った。

 試合前に描いていたのは「5点勝負。6点取って勝つ」。だが、1回戦で16安打を放った打線が仙台育英の左腕・長谷川拓帆投手(3年)の前に7安打で無得点。一方、先発の稲垣豪人投手(3年)が6安打1失点で公式戦初完投。

 「まさかこういう試合になるとは。長谷川君がいい球を投げていた。でも、うちの稲垣もベストピッチングだよ」。相手エースと、自チームの大黒柱をたたえた。そして「子どもたちはよく頑張った。いい試合だった」。強敵相手に接戦を演じたナインを褒めた。

 86年から新興校の日本文理を率いた。当初は部員が集まらない状態だったが、09年に夏の甲子園準優勝、04年に同ベスト4と全国に知られる存在に育て上げた。笠原遥也主将(3年)は言う。「1日でも、1秒でも長く監督と野球がしたかった」。孫ほども年が離れたナインの熱い思いに支えられて臨んだ最後の甲子園。「私は本当に幸せ者です」と笑顔で後にした。