中村だけのチームじゃないんだ! 広陵(広島)が15安打10得点で仙台育英(宮城)を破り、準優勝した07年以来10年ぶりの4強入りを決めた。6番・大橋昇輝内野手(3年)と7番・松岡直輝内野手(3年)がともに3安打2打点。ここまで今秋ドラフト1位候補の中村奨成捕手(3年)の活躍が目立っていたが、この日は打線全員が奮起した。広陵は春夏通算70勝目。悲願の夏初優勝へ、あと2勝となった。

 広陵は全員野球で初回から攻めた。1死二、三塁から4番の犠飛と相手暴投で2点を先制し、なおも2死二塁。「初回が大事だと思った」という6番・大橋が中前適時打を放ってチームを乗せた。この回4安打3得点。3回にも4安打3得点を奪い、序盤から点差を広げていった。終わってみれば、15安打10得点。前日19日にセンバツ王者・大阪桐蔭からサヨナラ勝ちをおさめた仙台育英の、勢いをよせ付けなかった。

 この日の試合前、主将の岩本が円陣で言った。「昨日、中村が4打点あげた。今日は自分たちがやろう。今日は全員で勝つぞ」。この言葉にナインは発奮した。19日の3回戦で、今秋ドラフト1位候補の中村が3試合連続となる本塁打。勝ち越しの今大会4号を放って注目を集めた。頼もしいチームの大黒柱。一方で、中村に頼りすぎている部分も感じていた。大橋は「自分も活躍したい。どうしても打ってやろうと思っていました」。3安打2打点で「主役」を食ってみせた。

 同じく3安打2打点と暴れた7番・松岡は、中村のすごさを間近で見てきた。松岡は「4番捕手」として中学3年時に全国ベスト16入り。「硬式で全国に出て自信があった」が、入学してすぐ中村の存在に仰天した。「軟式(出身)だと思っていたのに、あいつはすごいと思った」。肩も強く長打力のあるライバルを見て、1年夏に内野手として歩むことを決めた。この日は、その中村が打点をあげられない中で2打点。「たまたまです。まぐれなので。全部次につなごうという意識でやっている」と謙虚に話したが、堂々の活躍だ。

 中村だけじゃない、チームの底力を見せつけ、野村(現広島)と小林(現巨人)を擁して準優勝した07年以来の4強入りを決めた。これが春夏通算70勝目。中井哲之監督(55)は「いい選手たちなので、毎試合ドキドキさせてくれますよ」。悲願の優勝へあと2勝だ。【磯綾乃】