盛岡大付(岩手)の夏が終わった。花咲徳栄(埼玉)に1-10と完敗。先発した背番号10の左腕三浦瑞樹(3年)が5回までに7点を奪われ、強力打線は6安打に封じられた。チーム初、13年の花巻東以来、岩手県勢4年ぶりの4強入りには届かなかったが、春夏連続8強入りなど大きな足跡を残した。仙台育英(宮城)も広陵(広島)に4-10と敗れ、東北勢はすべて姿を消した。

 ハラハラ、ドキドキの「盛付(もりふ)劇場」が、大きな盛り上がりを見せることなく、幕を閉じた。2桁失点の9点差。主将の比嘉賢伸内野手(3年)は「まだ実感が湧かない」と寂しそうに言った。いつもなら点を取り返した。それができなかった。3回戦で3季連続本塁打を放った主砲の植田拓外野手(3年)は無安打。「自分たちの力が出せなかった」と完敗を認めた。

 花咲徳栄の先発右腕綱脇慧(3年)の、外角低めを正確に突く投球に苦しんだ。比嘉主将は「真っすぐと変化球のコンビネーションに対応できなかった」と話す。右打者にスライダー、左打者にはチェンジアップ。関口清治監督(40)は「連打は難しかった」と脱帽した。夏に限れば、昨年から6試合連続2桁安打。その強力打線が6安打で1点しか取れなかった。

 あらためて知らされた全国上位レベル。8回7失点で降板した三浦瑞は「低めをまったく振ってくれない。東北レベルなら振ってくれるのに」と驚いた。花咲徳栄はスタメン6人が左打者。そのため左腕の三浦瑞が先発マウンドを託されたが、許した9安打のうち7本を左打者に打たれた。

 4強は逃したが、関口監督は悲観ばかりしなかった。「試合は一方的でしたけど、しっかり階段を上っていると思う」。岩手史上初めての3季連続出場。昨夏は初の1大会2勝、今春のセンバツは春夏通じて初の8強、今夏は1年前を上回る3勝を挙げ、09年の花巻東に続く県勢2度目の春夏連続ベスト8。出場するたびにステップアップした。甲子園で戦い抜いた計10試合。同監督は「合格点を与えたい」とねぎらった。

 登録18選手のうち2年生は2人。ほとんどの1、2年生は応援席にいた。関口監督は「スタンドの残り部員がどう感じるか。一発屋じゃなくて、常に甲子園に行けるチームに」と下級生に奮起を求めた。常連校になることが経験値を高め、日本一への礎にもなる。高校野球100年の15年、仙台育英が準優勝。今年も東北勢の悲願「白河の関越え」は達成できなかった。来夏は第100回の記念大会。来春にはセンバツも控える。盛岡大付は、すぐに再出発する。【久野朗】