99回目の夏は、花咲徳栄(埼玉)が埼玉県勢初の日本一に輝いた。1大会最多本塁打記録を樹立した広陵(広島)中村奨成捕手(3年)はノーアーチに終わったが、3安打を放ち1大会最多安打タイとなる通算19安打をマークした。

 怪物が悔し涙を流した。広陵・中村の悲願は、あと1歩及ばなかった。4-14の9回2死満塁、6番佐藤の打球が高く上がった。二塁走者の中村が三塁を回ったところで、右翼手が捕球し、試合終了。上を向き涙を必死にこらえたが、ベンチ前に整列すると涙腺が決壊。「悔しいけど、最高の仲間とやれた。一生の宝物」。記録づくしの夏が終わった。

 中学までは「どうしようもないバカ」(中井監督)だった。授業開始にも気付かないくらい夢中で野球をやっていたほど。中学から強肩強打の捕手として広島県内で有名で「広島で自分よりすごいキャッチャーおらん」と自信満々だった。だが、広陵での2年半が中村を変えた。入学直後、機敏に動く先輩の姿に衝撃を受け、練習に没頭。1年生ながら春の県大会から背番号20で正捕手、夏には背番号2を射止めた。