次は勝利を-。第90回を迎えたセンバツが23日開幕した。3年ぶり2度目の出場となった英明(香川)は、第2試合で国学院栃木と対戦し、敗れた。“甲子園一家”の三男、山上慎太朗内野手(2年)にとってはほろ苦い聖地デビューとなった。

 1点を追う2回裏、1死二塁で7番山上がライト線へ二塁打。二塁走者は三塁で自重したが、打者山上は中継が乱れるの見て三塁へ。「前の走者が見えて慌てて帰ったが、間に合わなかった」と反省したように、三遊間で挟まれて憤死。1点差の試合だっただけに痛いミスとなった。

 だが、放った安打は、兄の思いも背負ったものだった。山上家の長男雄大さん(21)は14年夏に坂出商(香川)で、次男和伸さん(20)が15年春に英明でそれぞれ甲子園の土を踏んでいる。実家のリビングには、長男雄大さんが持ち帰った甲子園の砂と兄2人の出場記念写真が飾られているという。ただ、2人とも初戦敗退で、安打も記録することはできなかった。

 兄たちから甲子園の雰囲気を聞いていたという山上は「聞くのとは全然違います。人が多くて自分の考えていることが分からなくなった。緊張はしていなかったが、周りが見えなかった」と2回裏の走塁を振り返った。

 甲子園一家のゆえんは兄弟だけにとどまらない。父高央さん(49)はリトルリーグ時代に甲子園でプレーした経験がある。さらに、高校時代には尽誠学園(香川)で元阪神の故伊良部秀輝氏と同学年でチームメートだった。

 実家には特設ティーを設置し、兄たちの指導を仰いできた。この特設ティーは元々あった乳牛舎を取り壊して造られたもので、広さは甲子園の室内練習場より広いというから驚きだ。兄たちの合間を見ては、練習に付き合ってもらったという山上。「前日に見てもらった次の日の試合は活躍できた」という言葉からも甲子園経験のアドバイスは力強いものだった。

 夏に向けて「反省ばかり。1本出たけど課題は打撃と守備」と前を向いた山上。センバツで一家に初安打をもたらした三男が、夏は初勝利をプレゼントするために甲子園に帰ってくる。