1年夏に147キロをたたき出した岩手の新怪物、大船渡の佐々木朗希投手(2年)が今年初の公式戦に登板し、1回を3者連続奪三振に抑えた。8回からマウンドに上がり、自己最速を2キロ更新する149キロをマーク。打っては2安打1打点と気を吐いた。昨夏の県2回戦(盛岡北)以来、300日ぶりの公式戦出場で投打に強烈なインパクトを残し、二刀流の可能性を示した。試合は大船渡が大船渡東を9-2の8回コールドで下し、県大会出場を決めた。

 降りしきる雨の中、マウンド上には縦じまの巨塔がそびえ立った。長身189センチの佐々木朗はひと冬の成長を確かめるように、右腕を振りかざした。圧巻の3者連続空振り三振。2人目の3球目には、自校のスピードガンで自己最速の149キロをたたき出した。岩手の新怪物伝説が再び、幕を開けた。

 佐々木朗 雨が降っていたので、7、8割ぐらいの力で投げた。今日の調子はいい感じじゃなかった。むしろ悪い方。149キロ? 普通っす、もっと球速は出ると思う。

 投げるだけじゃない。この日は「1番中堅」で先発し、本職外の打撃も光った。2安打1打点と結果を出したが、「1番打者の役割を全然果たせなかった」と反省するほど、自分に求めるレベルは高い。岩手の大先輩で、投打に躍動するエンゼルス大谷翔平(23)をほうふつとさせる活躍に「刺激にはなります。二刀流も面白いかも」と興味を示した。

 昨夏の衝撃147キロデビュー後は公式戦出場がなく、チームは夏3回戦、秋も県初戦で敗れた。昨秋から就任した国保陽平監督(31)は温存理由を説明した。「体が成長途上だった。投げろと言えば投げられたと思うけど、彼の野球人生を長いスパンで見た場合、無理はさせられなかった」。16歳になっても、まだ止まらない肉体の成長を逆算した育成プランだったことを明かした。

 雌伏の冬を乗り越えた。昨秋の県大会で敗れると、1日5食の“食べ込み”を実施した。半年の間に身長は3センチ増の189センチ、体重は10キロ増の81キロになった。それ以上に変わったのが、内面の変化だった。

 佐々木朗 秋までは自分の実力でプロにいけるとは思ってなかった。でも目標がないと頑張れない。高い意識で過ごすためにも、プロを目指すと心に決めた。

 成長が一段落した今春から実戦復帰した。4月上旬の練習試合で今年初完投し、急ピッチで試合勘を取り戻している。「公立から甲子園にいくためにやっている。そして、将来はプロになる」。県内の強豪私学からの誘いを蹴って、地元の大船渡を選んだ。夢の実現をステップに、プロの世界に挑戦する。【高橋洋平】

 ◆147キロ衝撃デビューVTR 昨夏の県初戦(2回戦)に公式戦初登板。1点差に詰め寄られた8回2死二、三塁から3番手でマウンドに上がり、1回1/3を無失点。2人目の打者の時に自己最速の147キロをマーク。3三振を奪ってチームを3回戦に導いた。投じた14球のストレートはすべて140キロ台を計測した。

 ◆佐々木朗希(ささき・ろうき)2001年(平13)11月3日生まれ、岩手・陸前高田市出身。高田小3年から野球を始め、11年の東日本大震災で被災。その後、大船渡に移り住み、猪川小に転校。大船渡一中では軟式野球部に所属し、Kボール選抜で県大会出場。大船渡では1年夏からベンチ入り。今春の地区大会の背番号は20。189センチ、81キロ。右投げ右打ち。家族は母と兄、弟。