群馬に「怪腕」が現れた。新田暁・金子知生投手(3年)が渋川工戦で9回2失点、11奪三振の完投でチームを初戦突破に導いた。スカウト5球団が視察する中、自身の最速を1キロ更新する144キロをマーク。中学時代は捕手で、高校入学と同時に投手に転向した伸びしろ十分な右腕が、奪三振ショーでその名を知らしめた。またこの日、青森、京都、香川で開幕を迎えた。

 勝利の瞬間、新田暁・金子知は、右手を天に突き上げた。9回を6安打2失点、11奪三振で完投。高校野球通に知られた「未完の大器」が、結果で一気にその名を上げた。「(試合では)いつもあんな感じです」と照れた笑顔とは対照的に、マウンドでは闘志あふれる姿で仁王立ちした。

 試合開始直前、ネット裏にスカウトが集まり始めた。その数5球団。「新田暁にいい投手がいるらしい」と聞きつけ、視察に訪れた。ほとんどのスカウトが試合は初視察。あるスカウトは「どんな投手なのか、見ておきかった。器用なタイプで真っすぐの強弱をつけたり、感性を持った投手」とチェックを入れた。

 スピードガンを構えるスカウト陣に、名刺代わりの直球を投げ込んだ。1回2死、7球目に最速を1キロ更新する144キロを計測。「気付かなかった」と笑ったが、衝撃を与えた。5回までは3奪三振も、6回以降に8奪三振とペースアップ。昨夏以降、練習の合間に米を2合食べる「食トレ」で体重を10キロ増量し、スタミナも十分だった。

 今まで全国的にほぼ無名だった。小1~小3まで空手を習った。友達に誘われ、小5の11月から野球を始めた。中学までは捕手で、高校入学と同時に投手に転向。「120キロ出るか出ないか」から、進化を遂げた。「大谷翔平さんに憧れます。自分もいつか、プロでやりたいです」。100回大会の夏に楽しみな右腕が現れた。【久保賢吾】

 ◆金子知生(かねこ・ともき) 2000年(平12)12月6日生まれ、群馬県みどり市出身。小5の11月に野球を始め、中学では軟式野球部で捕手。高校入学と同時に投手に転向し、2年秋からエース。最速144キロで球種はカーブ、スライダー、チェンジアップ。高校通算15本塁打。178センチ、78キロ。右投げ右打ち。背番号11の尚生外野手(3年)は双子の弟。