また、みちのくに快速右腕が現れた。U18日本代表候補の金足農(秋田)吉田輝星(こうせい)投手(3年)が、自己最速を3キロ更新する150キロを記録した。今大会初戦で秋田北鷹を9回16奪三振完封。「目指すなら150キロと思っていたので素直に達成できてうれしい。歴史の1ページに名を刻めたと思います」と笑顔を見せた。

 2回表2死一塁、1-1からの3球目に会場をどよめかせた。ファウルだったがスコアボードに「150」。菊地亮太捕手(3年)も「リラックスしたフォームで、いつもより速く感じました」。受けるたびに裂けて血が流れ、今ではタコとなり固まった左手人さし指付け根が威力の証しだ。打者にも「うなる音が聞こえた」と目を丸くさせた。終盤にも145キロ超を連発。最後も三振で締めた。

 昨夏の決勝では1-5で明桜に敗れた。父正樹さん(42)も金足農野球部OBで、2年連続決勝敗退。吉田は「父が捕れなくなるような速い球を投げることが最初の目標でした。恩返しできるのは甲子園に連れていくこと」。父に投げたのは天王中3年時、試合中のブルペンが最後。“4度目”の悲願成就の思いも、球速を後押しした。

 同代表候補で今夏に154キロをマークした大船渡(岩手)佐々木朗希投手(2年)の敗退も刺激になった。「進路は甲子園が終わってから決めたい。でも日の丸をつけたい気持ちは強くなってます。関西勢にも負けられないので、東北勢初優勝して日本代表もつかみたい」。父のため、宿敵のため、日本代表入りのため、右腕を振り抜く。【鎌田直秀】

 ◆吉田輝星(よしだ・こうせい)2001年(平13)1月12日、秋田・潟上市生まれ。天王小3年に天王ヴィクトリーズで野球を始め、天王中では軟式野球部に所属。金足農では1年夏からベンチ入り。176センチ、81キロ。右投げ右打ち。家族は両親と弟。