土壇場の逆転劇だ。北北海道大会は、旭川大高が昨秋全道準Vの旭川実に9-8の逆転サヨナラ勝ちで、9年ぶりの甲子園に王手をかけた。2点を追う9回1死満塁から2連続押し出し四球で同点。最後は9番中筋大介捕手(3年)が、二塁後方にサヨナラ打を放った。

 仲間を信じてバットを振り抜いた。9回、同点に追いつき、なお1死満塁。旭川大高の9番中筋は内角のスライダーを「三振しても良い」とスイングした。詰まらされた打球はフラフラっと二塁ベース後方へ。前進していた相手二塁手、遊撃手が慌てて下がり、飛びついた。間に合わない。ポトリと落ちるサヨナラ打。「次が良い打者なので自分で決めようとは思わなかった」。結果を恐れず、最高の結末となった。

 逆転劇は6-8の9回1死一塁から始まった。5番楠茂が右越え二塁打を放ち二、三塁。さらに3連続四球で同点になり、中筋に回ってきた。北大会13打席目の初安打が貴重な殊勲打。1年春から先発マスクをかぶる守りの要で「攻撃では四球と犠打でしか貢献できていない」。ベンチから駆け寄ったナインから抱きつかれ「うれしすぎて何があったが覚えてない」というほど興奮状態だった。

 三度目の正直だった。旭川実には昨秋、今春と地区代表決定戦で2連敗していた。「勝つことは目標。今度こそという思いは強かった」と青木主将。甲子園に行くためには、昨秋全道準Vチームを倒さなければいけない。組み合わせが決まった時からリベンジしか思い描いていなかった。

 中筋は力強く言う。「僕らはやる気と気合のチームなんです」。7回2死には地区予選初戦で右くるぶしを骨折した佐々木が代打で登場した。大会直前まで松葉づえをつき、万全の状態ではない背番号8のフルスイング。左邪飛に倒れたが、ナインを鼓舞した。終盤の逆襲につながった。

 次は9年ぶりの聖地をかけた決勝だ。両チーム合わせて21安打、2時間22分の激闘を終えて端場雅治監督(49)は「まずは気持ちを落ち着かせて、冷静になってから迎えたい」。最大のライバルの思いを背負って決勝の舞台に立つ。【西塚祐司】