背番号「0」の応援団長、藤沢清流の近藤実夏(みなつ)外野手(3年)は、炎天下の中三塁側応援スタンドで1人立ち続けていた。赤いハチマキを巻き、青いメガホンを持って守備中も座らない。3年生10選手の中で、唯一ベンチ入りできなかった女子部員。

 「みんなの輝いている姿が見られました。横浜が相手なので1球1球の重みが違う。みんなと同じグラウンドで練習できて、本当良かった…」。そう言うと、大粒の涙があふれ出た。

 女子部員は公式戦のベンチ入りが認められていない。普段は男子と同じメニューをこなし、練習試合では安打も打つ。自主練習では毎日10キロ走り込んだ。打撃が得意な外野手で、榎本正樹監督(30)は「ベンチに入る力はあった」と言う。

 近藤は「私のできることは持ち味の『声』で、みんなの背中を押すこと」と応援団長に立候補。そんな姿に仲間も心を動かされた。6月下旬の大会メンバー発表の時、3年生全員の名前が書かれた背番号「0」のユニホームをサプライズプレゼントされた。「私が『背番号付けたい』って言ってたのを、みんなが覚えてくれてたんです。うれしくて、今日まで1回も洗ってません」と笑う。

 高校最後の練習試合になった7月1日の厚木西戦は、初めて背番号を付けて出場した。無安打だったが、最終打席、左翼後方まで伸びた打球は3年間で1番の当たりだった。卒業後は環太平洋大で硬式野球を続ける。仲間と過ごした3年間は「私の宝物です」。【前田祐輔】