作新学院がサヨナラ勝ちで宇都宮工を破り、10年連続で栃木県大会決勝に進出した。1-1の9回1死、石井巧遊撃手(2年)が高めに浮いたスライダーを左翼席へ。「少し上がりすぎました。頼む、入ってくれと思いました。気持ちよかったです」と涙を流した。

 負けられない重圧から一瞬だけ解放された。だから泣いた。兄は日本ハム石井一成内野手(24)。作新OBで主将を務め、甲子園に3度出場した。兄の2年時から栃木連覇が始まり、8連覇をかけた決勝戦になる。常勝を義務づけられたチームにあって期待が高く、2年ながら遊撃レギュラーに定着。千金打に至る3打席は凡退し、4回にエンドランを失敗すると小針崇宏監督(35)から厳しい言葉を掛けられた。「先輩にも迷惑を掛けた」。勝って反省の厳しさは作新の伝統であり、骨太の強さの源泉だ。

 一番身近な存在に憧れ後を追い、同じ背番号「6」を背負う。大会前には激励のメッセージが届き「シーズン中なので忙しいはず。うれしかったです。先輩方と1日でも長く野球をやりたいです」。動画で弟の勇姿を見届けた兄は「スタンドで、おばあちゃんが大喜びして跳びはねている姿が映り込んでましたね」と目を細めた。白鴎大足利を破って8連覇を決め、歴史を紡ぐ。【山川智之】