第100回全国高校野球選手権記念大会は、第14日の準々決勝4試合が行われる予定で、センバツ覇者の大阪桐蔭(北大阪)など近畿勢3校に金足農(秋田)が登場する。

 元球児による「レジェンド始球式」は高松一OBの中西太氏が務める。1949年春夏、51年夏の3度出場し、4強を2度経験している。52年に西鉄ライオンズ入団。新人王、首位打者2回、本塁打王5回、打点王3回、MVP1回を獲得。西鉄時代に選手兼任監督を務めた。1999年殿堂入り。

 

<見どころ>

【第1試合(8:00) 大阪桐蔭(北大阪)-浦和学院(南埼玉)】

 大阪桐蔭が、全国制覇した2014年以来4年ぶり6度目の4強入りを目指す。西谷監督は勝てば、春夏通算の監督勝利数が53勝9敗となり勝率8割5分5厘に。同8割5分3厘の中村順司(PL学園)を抜いて勝率で単独トップに立つ。大阪勢夏の勝利数170勝も懸かる。

 藤原と根尾が2回戦(対沖学園)で本塁打を放っており、夏の本塁打数はチーム通算44本。1位PL学園(45本)にあと1本と迫っている。また、春夏通算本塁打数でも67本で、1位PL学園(70本)にあと3本と迫る。

 3回戦までチーム打率は3割1分1厘。5番根尾、1番宮崎、2番青地が打率5割と好調。根尾らとともに「銀河系軍団」を形成する7番山田は3割7分5厘、4番藤原は3割8厘とまずまず。3回戦(対高岡商)で3番中川が2安打し状態も上向いており、主軸の前にいかに走者をためられるか。

 投手陣は、エース柿木が全3試合に登板し14回1失点、16奪三振、2四死球、防御率0・64と安定感抜群。2回戦(沖学園)では今大会最速となる151キロを計測した。準々決勝の先発はエース柿木か。13日の2回戦で登板し中4日の根尾か、左打者がズラリと並ぶ浦学打線を考慮すれば、3回戦(対高岡商)で先発した大型左腕の横川を中1日で起用するか。西谷監督の思惑はいかに。

 浦和学院は、鈴木健(元ヤクルト)らを擁した1986年以来32年ぶり2度目の4強入りを目指す。

 チーム打率は3割1分9厘で7人が3割以上をマークしている。チームでは2番矢野が4割4分4厘で打率トップ。1番中前と3番蛭間が3割7分5厘と好調。4番上野(1割4分3厘)と6番後藤(1割1分1厘)に当たりが戻れば。初戦で本塁打を放った3番蛭間は高校通算28本塁打と長打も期待できる。

 投手陣は盤石。8強進出のチームでは唯一の無失点。エンゼルス大谷とそっくりフォームの190センチ右腕・渡辺勇は3回戦(対二松学舎大付)で完封シャットアウト。2試合先発し15回無失点、17奪三振。最速149キロの速球と140キロ台のツーシームで大阪桐蔭相手に奪三振ショーを演じるか。渡辺勇以外も永島、美又、河北らブルペンは充実している。

 初戦が56代表校の最後となる大会第8日(12日)に登場。ベスト8まで大阪桐蔭より1試合少ない2試合で勝ち上がった。スタミナ面でのアドバンテージを生かせるか。

 両校は2012年のセンバツ準々決勝で対戦。藤浪晋太郎投手(現阪神)を擁する大阪桐蔭が9回に逆転し3-2で勝利。同年、大阪桐蔭は春夏連覇を達成している。

◆大阪桐蔭のおもなOB 阪神藤浪晋太郎、西武森友哉

◆浦和学院のおもなOB 元ヤクルト鈴木健、巨人大竹寛

 

【第2試合(10:30) 報徳学園(東兵庫)-済美(愛媛)】

 報徳学園は、2010年以来8年ぶり4度目のベスト4を目指す。

 チーム打率は2試合で2割8分3厘。注目はドラフト1位候補の小園遊撃手だ。打率4割4分4厘(9打数4安打)で初戦となった2回戦(対聖光学院)では1試合個人最多となる3二塁打をマーク。3回戦(対愛工大名電)では5打数1安打と本調子ではなかったが、第2打席の振り逃げでホームを踏むなど韋駄天・小園が出塁すれば何かが起きる。また、阪神糸井のはとこ5番糸井辰徳も好調。2試合で打率5割7分1厘(7打数4安打)2打点と好調。親戚の阪神糸井と同じ右翼を守る辰徳が“超人”級の活躍を見せるか。

 投手陣は2試合とも2失点でしのいだ。2試合とも救援した木村が計6回4安打無失点と好調。3回戦に先発した林は7回2失点(自責1)、初戦の2回戦に先発した渡辺も5回3分の0を投げ2失点(自責2)と安定している。

 済美は、準優勝した2004年以来14年ぶり2度目4強入りを目指す。

 チーム打率は2割7分3厘。2回戦(星稜)で延長13回タイブレークでサヨナラ満塁本塁打を放った1番矢野は打率5割と好調、9番政吉も5割とバットが振れている。4番池内は9分1厘(11打数1安打)、5番伊藤が1割6分7厘(12打数2安打)のバットが気掛かりだが、4強入りへ2人の復活に期待したい。

 エース山口直哉は3試合連続完投で球数は計414球。3回戦(対高知商)では、140キロ前後の直球とスライダーを低めに集め、9回1失点の完投勝利(121球)。酵素の力を利用した「ぬか風呂」や酸素カプセルに入り疲労回復を図る山口直だが、中1日でどこまで戻るか。

◆報徳学園のおもなOB 元近鉄金村義明、ロッテ清水直行コーチ

◆済美のおもなOB 広島福井優也、楽天安楽智大

 

【第3試合(13:00) 日大三(西東京)-下関国際(山口)】

 強打の日大三が、全国制覇した2011年以来7年ぶり3度目の4強入りを目指す。過去4強入りした2回はいずれも優勝している吉兆データもある。小倉全由監督の監督通算勝利数も蔦文也(池田)を抜き、単独9位となる通算37勝目も懸かる。

 チーム打率3割5分9厘、出塁率5割7分3厘、28得点は8強入りした中ではトップを誇る。投手以外の野手はほぼ出塁率4割以上。さらに、2回戦まで打率1割2分5厘だった3番日置が3回戦(対龍谷大平安)で2安打放ち復調気配。打撃面では好材料がそろう。

 投手陣も層が厚い。3回戦では2年生の広沢が今大会初登板初先発で自己最速の148キロを計測するなど5回2失点の好投。2回戦(奈良大付)では西東京大会で登板がなかった、U18日本代表候補の井上(2年)が150キロをマークした。河村は予選から9戦全て登板し好リリーフを見せる。林(3年)も登板機会がないが、背番号1の中村を含め変幻自在の投手陣は3試合27回で被安打15、10失点。継投で最少失点にしのいで強力打線の援護を待ちたい。

 下関国際は、勝てば初の4強入り。山口勢では2005年宇部商以来13年ぶり10度目となる。

 チーム打率は2割4分5厘。1試合当たりの得点数4・3点は8強の中ではワーストだが、2回戦で創志学園の好投手西を攻略した「待球作戦」など、坂原監督の采配にも注目だ。3回戦(対木更津総合)ではエースで4番の鶴田に今大会初安打となるタイムリーが出たのも大きい。

 投げては、最速147キロを誇る鶴田が130キロ後半の高速スライダーを武器に3試合連続完投。防御率1・93で安定感が光る。球数が計390球。今大会初の連投となるが、疲労の回復具合はどうか。

◆日大三のおもなOB ヤクルト近藤一樹、阪神高山俊

◆下関国際のおもなOB ロッテ宮崎敦次、東農大北海道・市丸貴大

 

 

【第4試合(15:30) 金足農(秋田)-近江(滋賀)】

 8強中唯一の公立校の金足農が、1984年以来34年ぶり2度目の4強入りを目指す。エース吉田が3試合連続完投で防御率2・67。ここまで06年の田中将大ら名投手と並ぶ3試合連続2桁奪三振で計41K。3戦連続2桁Kは東北勢では史上初。4戦連続2桁Kなら、12年松井裕樹(桐光学園=現楽天)、06年斎藤佑樹(早実、現日本ハム)ら6人が記録。吉田は、ここまで3戦いずれも13K以上(14K、13K、14K)を記録しており、4戦連続13K以上となれば、1946年大会の平古場昭二(浪華商)に次ぐ、戦後2人目の快挙。

 3回戦(対横浜)では9回3者連続三振で締め、最終打者には自己最速タイの150キロを計測したタフガイだが、3試合で球数は計475球。連投となる準々決勝でどこまで踏ん張れるか。また、吉田が試合前と最終回の守りに入る前にマウンド後方でみせる刀を抜く「シャキーン」のポーズは自分をリラックスさせるためのルーティン。“侍パフォーマンス”にも注目だ。

 チーム打率は3割2分2厘。エース吉田は3回戦(横浜)で2ランを含む3安打で打率も5割5分6厘と急上昇。6番高橋と7番菊地亮太はいずれも打率4割4分4厘と好調だ。

 3回戦で逆転3ランを放った6番高橋は金足農では生物資源科で畜産を学び、鶏や豚を飼育する。「動物は人間のために生まれて、人間のために育って、人間の体のためになってくれる」と感謝。高橋は秋田県大会決勝の前日、ニワトリ小屋で「明日頑張ってくるからな」と話しかけながら全羽に餌をあげた。「いいことをすれば返ってくる。僕も羽ばたけました」。優勝翌日には、酷暑の中で豚に水浴びさせた。「豚も冷たい水だと、気持ちよさそうにするんですよね。熱中症対策です。だから僕たちも熱中症になりません」。心温まるエピソードを持つ高橋のバットにも期待したい。

 近江は、準優勝した2001年以来17年ぶり2度目の4強入りを目指す。

 チーム打率は3割4分3厘で4番北村が絶好調。打率6割1分5厘(13打数8安打)、2本塁打、11打点を記録し、現在、今大会の打点王だ。また、9番住谷も打率7割7分8厘(9打数7安打)でベスト8の進出したチームでは打率トップ。1番木村も5割4分5厘(11打数6安打)。2番土田、7番山田も3割超をマークしており、打線の上位、中軸、下位に好調なヒットマンがいる。

◆近江のおもなOB 阪神植田海、DeNA京山将弥

◆金足農のおもなOB ヤクルト石山泰稚、元中日小野和幸