9人で戦ってきた「金農ナイン」の絆は、10人目の選手を加え、ますます強まる。金足農(秋田)3年生部員全10人中、唯一ベンチ外となった川和田優斗外野手。秋田大会は背番号20も、大阪入り後のメンバー発表では名前を呼ばれなかった。

 佐々木大夢主将(3年)は「誰1人、言葉を発することができなかった。空気が張り詰めました」。川和田も仲間の前では気丈に振る舞った。別室で「将来に生きるぞ」と肩を抱かれたコーチの胸に顔をうずめ、涙で着衣をぬらした。エース吉田輝星(3年)が切り出した。「目標は日本一だけれど、最低限でも国体の権利をとろう。川和田と、もう1回野球をしようぜ」。佐々木主将から「ボールボーイをやってくれ。一番近くにいられるから」と指名された。

 投手だった1年秋に死球を受け右肘筋挫傷。約2カ月間のリハビリを経て復帰も、思うように投げられず外野手に。決勝後「審判にボールを持っていく時にも全力疾走を貫いた。ボールもウイニングボールになれと思って全力で磨きました」。仲間に呼ばれ、甲子園の土も必死に集めた。9月30日開幕の福井国体は“10人野球”で大阪桐蔭にリベンジする。【鎌田直秀】